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「五輪が社会を分断する斧に」待ち続けた作家・額賀澪さんの答え

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東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場前に立つ作家の額賀澪さん。「スポーツが社会を分断する道具になった」と訴える=東京都渋谷区で2021年6月14日、内藤絵美撮影
東京オリンピックのメイン会場となる国立競技場前に立つ作家の額賀澪さん。「スポーツが社会を分断する道具になった」と訴える=東京都渋谷区で2021年6月14日、内藤絵美撮影

 小説に救われることがある。2013年9月に東京オリンピック開催が決まってから8年近くの間、騒動続きの五輪の取材を続けてきた。「自分は何をしているのだろう」と無力感にさいなまれることが度々あった。そんな時、SNS(ネット交流サービス)で力強い言葉を見つけた。「私なりの答えは近々掲載される短編に込めました」。一読して、強い共感を覚えた。

「五輪だけが特別なのか」

 SNSの投稿者は作家の額賀澪さん(30)。駅伝や競歩などスポーツや五輪を題材とした小説で知られる。青春小説でありながら、さわやかだけでは終わらないのが魅力だ。小説に込めた思いを聞きたくて、関東甲信地方が梅雨入りした14日、曇天の国立競技場駅前で待ち合わせた。

 「この辺りに来るたびに、わざわざ国立競技場が見える出口を選んで眺めています。本当に開催するのですね」。ただし、向かったのは東京五輪のメイン会場ではなく、住宅街を抜けた先にある将棋会館だった。

 5月発売の「オール読物」(文芸春秋)掲載の短編小説「星の盤側」で、額賀さんが取り上げたのは将棋だった。カメラマンの主人公は、スポーツ雑誌の編集長から次号の表紙の撮影を依頼された。思いを巡らせながら会館に向かう主人公にならい、最寄りの千駄ケ谷駅ではなく、こちらのルートを選んだ。

 小説の舞台は新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、東京五輪が開催されてから数年後の世界。登場人物の一人が酒に酔いながら振り返る。「オリンピックの名のもとに、スポーツは社会を分断する斧(おの)にされちゃったんだ」

 目の前で繰り広げられている光景がまさにそうだ。国際オリンピック委員会(IOC)の最古参のディック・パウンド委員は英紙の取材に、「アルマゲドン(世界最終戦争)でもない限り、東京五輪は予定通り開催される」と語り、ジョン・コーツ副会長は緊急事態宣言となっても開催するか問われ、「答えは間違いなくイエスだ」と言い切った。「五輪貴族」と呼ばれる彼らの目には、日々の暮らしに追われる人々の姿はまるで映っていないに違いない。

 額賀さんはため息交じりに語る。「特定の業界のために国を挙げて、巨額のお金をかけて大きなイベントをする。それがいかに無理なことか。五輪だけ特別なのかと怒る気持ちもよく分かります。このコロナ禍で五輪を開催するならば、不公平感と釣り合うだけの何かが五輪になければいけないはずなのに……。片方のてんびんばかりに重りが載せられて完全に釣り合わなくなっています」

 小説にはこうつづられている。…

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