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オーケストラのススメ

音楽評論家の山田治生さんが、国内外のオーケストラの最新情報や鑑賞に役立つ豆知識などを紹介、演奏会に足を運びたくなるコラムです。

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オーケストラのススメ

~55~ オーケストラの個々のプレーヤーの妙技を楽しむ管弦楽作品

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5月には楽団員が独奏を務める作品を数多く演奏したNHK交響楽団=写真は原田慶太楼が指揮を務めたヒナステラ「協奏的変奏曲」の様子 写真提供:NHK交響楽団
5月には楽団員が独奏を務める作品を数多く演奏したNHK交響楽団=写真は原田慶太楼が指揮を務めたヒナステラ「協奏的変奏曲」の様子 写真提供:NHK交響楽団

山田治生

 NHK交響楽団の5月公演は、楽団員をフィーチャーするプログラムが組まれ、楽団員が独奏を務める、ヴァイオリン協奏曲やチェロ協奏曲、管楽器のための協奏交響曲などの作品が演奏されたが、なかでも原田慶太楼が指揮したヒナステラの「協奏的変奏曲」は、打楽器をのぞくすべてのパートにソロがあり、各楽団員の個性を楽しむことができた。

 同曲のようにオーケストラのそれぞれの楽器にスポットライトが当てられていく作品で最も有名なのは、ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」であろう。「パーセルの主題による変奏曲とフーガ」という副題がついていて、変奏ごとに一つの楽器群がフィーチャーされる。これは1945年にBBC制作の音楽教育映画のために作曲されたが、楽器紹介曲の試みは他にも存在する。日本でも、久石譲の「オーケストラ・ストーリーズ『となりのトトロ』」や小室昌広編曲の「ディズニーのメロディによる管弦楽入門」などが作られている。

 そういえば、5月末にラトルがベルリン・フィルを相手に、ヒナステラの「協奏的変奏曲」とブリテンの「青少年のための管弦楽入門」を一つのコンサート(無観客)で取り上げ、オンラインで配信した。まさにベルリン・フィルの名手たちの妙技が満喫できるプログラムであった。

 プロコフィエフの「ピーターと狼」も、それぞれの楽器にキャラクターがあてはめられているので(フルートは小鳥、オーボエはアヒル、クラリネットは猫、ファゴットはおじいさん、ホルンは狼、など)、各プレーヤーのソロを楽しむことができる。

 管楽器が順番にソロをとる曲としては、ラヴェルの「ボレロ」がある。たった二つのメロディーを転調もせず、延々と受け継いでいくこの曲は、まさにオーケストラのショーケースといえよう。

 オーケストラの首席奏者の多くがソリストとして参加する作品としては、マルタンの「7つの管楽器、ティンパニ、打楽器と弦楽のための協奏曲」があげられる。マルタンは、独奏者たちの音楽性と技量の発揮を目的としてこの作品を書いた。

 もちろん、バロック時代の合奏協奏曲やバッハの「ブランデンブルク協奏曲」では、さまざまな独奏楽器を必要とし、それぞれが注目される。モーツァルトは、四つの管楽器のための協奏交響曲やヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を作曲した。そして、20世紀になると「管弦楽のための協奏曲」が書かれるようになる。

 バーンスタインがボストン交響楽団の創設100周年を祝して彼らのために書いた「オーケストラのためのディヴェルティメント」は、弦楽器(ソロを含む)による「ワルツ」、オーボエ、ファゴット、ハープによる「マズルカ」、第3トランペットがソロを吹く「サンバ」、金管楽器、打楽器、ピアノによる「ブルース」、3本のフルートによる「追悼」など、オーケストラのそれぞれのセクションが活躍するように書かれている。米国マサチューセッツ州出身で、ボストン響を愛していたバーンスタインならではの作品である。

筆者プロフィル

 山田 治生(やまだ はるお) 音楽評論家。1964年、京都市生まれ。87年、慶応義塾大学経済学部卒業。90年から音楽に関する執筆を行っている。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人」「トスカニーニ」「いまどきのクラシック音楽の愉しみ方」、編著書に「オペラガイド130選」「戦後のオペラ」「バロック・オペラ」などがある。

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