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美術批評家・岩村透に光 社会と芸術結ぶ運動 今橋映子教授、30年の研究を著書に

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今橋映子著『近代日本の美術思想』=東京都千代田区で2021年6月14日、小川昌宏撮影
今橋映子著『近代日本の美術思想』=東京都千代田区で2021年6月14日、小川昌宏撮影

 岩村透(とおる)(1870~1917年)の名前を聞いたことがあるだろうか。明治末から大正初期に、芸術家同士を結び、「社会と芸術」のあり方を模索した美術批評家だ。忘れられた活動の全貌に光を当てるべく、東京大大学院の今橋映子教授(比較文学・比較文化)が30年の研究の成果を『近代日本の美術思想 美術批評家・岩村透とその時代』(上下・各2万4200円、白水社)にまとめた。本書からは100年後の美術界を見据えたような先見の明と共に、芸術への政治介入にあらがった芸術家たちの姿も見えてくる。

 「今後の社会は無益、無意味なるものゝ存在を許さない。(中略)社会的生存の意義、価値を吟味せられ、迅速に、取捨されつゝある」。社会における美術の必要性を訴えた『美術と社会』(15年)の冒頭で岩村が記した言葉だ。今橋教授は「コロナ下で芸術は不要不急なのか問われたが、岩村は同様の問題意識を持っていた」と話す。

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