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森五輪組織委会長辞任

東京オリ・パラ組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言から辞任。五輪憲章にも背く発言に、国内外から批判が集まりました。

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命より五輪優先、あの時から 霞ケ丘アパート住民追う監督の警告

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国立競技場建て替えのために解体された都営霞ケ丘アパート=(c)Shinya Aoyama
国立競技場建て替えのために解体された都営霞ケ丘アパート=(c)Shinya Aoyama

 「人の命よりもオリンピックを優先させる。まさに、あの時と同じです」。新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪開催を危惧する声が高まる中、政府は「安心・安全な大会」と繰り返している。五輪に伴う再開発で解体され、住民たちが移転を余儀なくされた「都営霞ケ丘アパート」。この場所や住民を撮り続けた映画監督の青山真也さんは、コロナ禍で開催に突き進む現状と五輪のために住民を「排除」した過去を重ね合わせ、「理性的な説明を避け、『オリンピックは開催されるべきものだ』という1点で突き進んでいる」と批判する。開幕まで1カ月を切った五輪の陰で「失われたもの」について考えた。【聞き手・上東麻子/デジタル報道センター】

 都営霞ケ丘アパートは1964年の東京五輪を機に新宿区に整備され、2回目の五輪のために2016~17年に取り壊された。移転直前の15年末ごろは、全10棟に約120世帯が暮らしていた。古くから住む高齢者や単身世帯も多く、近所で「しょうゆを借り合う」ようなコミュニティーがあった。だが、最大8万人を収容する新しい国立競技場の建設用地が広がり、解体されることになった。立ち退きに反対する声も上がったが、建設計画は遂行された。

 青山さんは、13年から現場で取材を始め、14年から移転が終了した17年までカメラを回し続けた。映画「東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパート」には、そこに住んでいたお年寄りたちの静かな日常と引っ越しの様子が、淡々と描かれている。

「五輪は開催されるべきもの」という一点で突き進む

 ――感染状況や観客を入れての開催を危惧する声が上がる中、五輪は開かれようとしています。どう受け止めていますか?

 ◆あの時と全く同じです。アパートの移転をめぐり、反対していた住民たちが東京都や東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に説明を求めても、全く取り合ってもらえませんでした。ある男性は、連日訪問する東京都の職員に移転を迫られ、精神的に追い込まれて移転に同意しました。そうやって移転は強行されたのです。理性的で合理的な回答を避け、とりあえず「五輪は開催されるべきものだ」という一点張りで突き進む。東京都も組織委員会も政府もずっとその姿勢は変わりません。そういう意味ではぶれていませんが、そのぶれなさ具合が怖いのです。

 ――移転で住民たちの生活は大きく変わったのですね。

 ◆団地内には小さな商店があり、足の不自由な住民の部屋まで食料を届けたり、顔を合わせれば、たわいないおしゃべりをしたりするお年寄りたちの関係性がありました。しかし、…

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