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現代に生きる山頭火俳句/下 ふとした瞬間、染み入る郷愁=作家・俳人 せきしろ

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 私が自由律俳句に出会ったきっかけは国語便覧だった。確か1980年代の半ば、高校生の時だったと記憶している。教科書はどれも堅く退屈なものであったが、国語便覧は雑誌のような面白みと情報があり授業中の唯一の娯楽だった。

 自由律俳句はとにかく衝撃的であった。当時流行(はや)っていたパンクという音楽ジャンルを知った時のような感覚に似ていた。私の祖母が定型の俳句をやっていたから幼い頃から俳句に触れる機会があって、私は祖母の俳句が大好きであったが、自由律俳句は、「律」が自由であり自分のリズムで自分の好きなことが言える魅力を感じた。すぐに図書室にあった自由律俳句に関する本を読んだもののそれで満足し、自分でやってみようというところまではいかなかった。理系だった私はその後国語から離れ、二度と学校で国語と交わる機会はなかった。

 そんな私が何の因果か物書きになり、とはいえ文才も仕事も人脈もなく、ただただアウトプットされない言葉たちと憂鬱が溜(た)まっていった。ある日ふと自由律俳句のことを思い出し、そこに自分の救済を求めた。言葉は悪いが「なんでも良いんだ」ということに気づかされ、自分は自分の思ったことをやることにした。そして今に至る。

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