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村上春樹をめぐるメモらんだむ

原作映画「ドライブ・マイ・カー」がカンヌへ 普遍的な”関わり”問う

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家福(西島秀俊)の愛車を運転する専属ドライバーの渡利みさき(三浦透子)(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
家福(西島秀俊)の愛車を運転する専属ドライバーの渡利みさき(三浦透子)(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

 村上春樹さん原作の映画「ドライブ・マイ・カー」の試写を見た(公開は8月20日からTOHOシネマズ日比谷ほか)。監督・脚本は今年のベルリン国際映画祭で「偶然と想像」が審査員大賞(銀熊賞)を受賞し、いま最も注目される日本の映画監督の一人、濱口竜介さん。「ドライブ・マイ・カー」も7月のカンヌ国際映画祭でコンペティション部門への出品が決まっている。主演は数多くの映画やテレビドラマでおなじみの人気俳優、西島秀俊さんで、映画に疎い筆者も期待に胸を膨らませて約3時間の作品を見た。そして期待通り、十分に楽しむことができた。

 冒頭のシーンで、西島さん演じる俳優の家福(かふく)の妻で脚本家の音(おと)(霧島れいか)の語る話が、原作が入った短編集「女のいない男たち」(2014年)に収められた別の短編「シェエラザード」から取られたものなのはすぐに分かった。そして、一種のシンクロニシティー(偶然の一致)に自分でも驚いた。当コラムで前回取り上げたのがまさに「シェエラザード」だったからだ。このことは見終えた後、公式パンフレットのインタビューで濱口監督自身が明らかにしているのを読み、確認できた。

 また、濱口監督は同じ短編集から「木野」という作品のモチーフも使ったと述べているが、こちらはパンフレットを読むまで気づかなかった。むしろ、映画のラストで家福は専属ドライバーの若い女性、渡利(わたり)みさき(三浦透子)と一緒に、みさきの故郷・北海道へ車を走らせるのだが、この長距離の運転による移動はむしろ長編「騎士団長殺し」(17年)を想起させた。

パルムドール受賞「うなぎ」との異同

 さて、この映画から筆者が受け取った、ごく個人的な感想は二つある。門外漢なので的外れな話になるかもしれないが、一つは…

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