「日本は『おもてなし』の国なのか」 収容者が語る入管の実態
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今年3月に名古屋入管で収容中のスリランカ人女性が希望する治療を受けられずに死亡したことは記憶に新しい。入管施設内の「密室」で何が起きているのか。米国出身の映像作家、イアン・トーマス・アッシュさん(45)は面会室に小型カメラを持ち込むなどしてドキュメンタリー映画「牛久 Ushiku」を製作した。収容者が語る内部の実態とは――。【金志尚/デジタル報道センター】
映画のタイトルは、茨城県牛久市にある東日本入国管理センター(牛久入管)を指している。東京都心から電車とバスを乗り継いで約2時間。林に囲まれた、文字通り辺ぴな場所にひっそりと建つ。全国に17カ所ある入管収容施設の一つだ。
目の前で起きる「人権侵害」
東京を拠点に活動するイアンさんが初めて牛久入管を訪れたのは、2019年の秋。収容者の面会活動をしている友人から「一緒に行かないか」と誘われたのがきっかけだった。
「収容施設にいる外国人のことは気になっていました。実際に訪れると、何人かは(心身ともに)非常に弱っていて、命の危険を感じるほどでした」
面会で感じたことを周りの日本人に話したが、反応は薄かった。「刑務所と同じじゃないの」「どうせみんな犯罪者なんでしょ」。返ってきたのは誤解や無理解に基づく言葉だった。
入管の実態がほとんど知られていないと感じたことが、今作を手がける動機の一つになった。加えて、自身と同じ外国人が直面する厳しい境遇を前に、「何かできることはないかという使命感にも駆られました」と語る。
だが、肝心の撮影には大きな壁があった。収容者が普段いる部屋に立ち入ることはできない。唯一、収容者と接触できるのは面会室だが、出入国在留管理庁は「保安上の理由」からカメラや録音機器の持ち込みを認めていない。スマートフォンもNG。そこでイアンさんが考えたのが、小型カメラを使うことだった。
「目の前で人権侵害が起きている。私は証人としてそれを記録しなくてはいけないと思いました。中に入らないとその証拠が手に入らない。ルールは尊重すべきですが、一人の人間として、目の前で起きていることに蓋(ふた)をしてはいけないと思ったのです」
面会室には収容者と面会者を隔てるガラスの仕切りがある。例えとしてあまり適切ではないが、ドラマなどに出てくる刑務所をイメージすると分かりやすいかもしれない。イアンさんは19年冬からカメラを持ち込み、収容者が施設内の状況や自分自身の心境などを語る様子を数カ月にわたって撮影した。…
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