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文化芸術への助成 表現萎縮させない運用を

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 文化芸術活動への助成のあり方に一石を投じる司法判断だ。

 日本芸術文化振興会(芸文振)が映画「宮本から君へ」に助成金を交付しないと決めたことについて、東京地裁の判決はその決定を取り消した。

 1000万円の助成が内定していた。しかし、出演者の一人が麻薬取締法違反で有罪確定後、芸文振が「公益性の観点から適当ではない」と一転、不交付とした。

 映画製作会社が決定の取り消しを求めていた。一方、芸文振は、助成金を交付すれば、国は薬物に寛容という誤ったメッセージが広がる恐れがあると主張した。

 判決は、芸術的な観点から専門的知見に基づいて交付が内定しており、それを覆して不交付とする合理的な理由はないと断じた。

 芸文振の対応を「裁量権の範囲を逸脱、乱用した違法な処分」と結論づけた。自由な表現活動と公益性のバランスに配慮したものだと言えるだろう。

 そもそも助成制度は、芸術の創造や普及、文化の振興を図るためのものだ。映画だけでなく、演劇や音楽、演芸など対象は多岐にわたる。

 小規模でも芸術性に富んだ活動を支援し、多様な文化を守ることに意義がある。将来の作り手の育成にもつながり、国民に豊かさをもたらす。

 芸文振は今回の不交付決定後に要綱を見直し、「公益性の観点から不適当と認められる」場合は、交付を取り消すことができるようにした。

 萩生田光一文部科学相も判決後、どのような場合に公的支出が望ましくないかなど、ガイドラインを設けるように指示したことを明らかにした。

 今後、交付を判断する際の根拠にしたい考えだろう。

 だが、公益性に反するかどうかは、その時々の社会状況に応じて個別に判断されるべきものだ。判決も「公益性は多義的な概念」と指摘する。

 しゃくし定規に適用できるものではない。創作の自由度を狭める恐れもある。

 助成制度の運用にあたっては、表現活動に携わる人たちの自主性を重んじ、萎縮を生まないよう配慮することが必要だ。

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