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経産省キャリアの逮捕 国民欺いたモラルの欠如

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 経済産業省の若手キャリア官僚2人が詐欺容疑で警視庁に逮捕された。

 新型コロナウイルス禍で打撃を受けた個人事業主ら向けの「家賃支援給付金」をだまし取り、高級腕時計の購入や自宅マンションの家賃などに充てていたという。

 飲食や小売りなど事業者の打撃は大きい。にもかかわらず、政府の支援は後手に回った。事業を所管する経産省の官僚が不正受給を行っていたとすれば、国民の苦境をよそに私利を追求する極めて悪質な行為だ。モラルの欠如が甚だしい。

 梶山弘志経産相は、逮捕から3日後のきのうになって記者会見し、「国民におわび申し上げる。捜査に全面協力し、全容解明を踏まえて厳正に対処する」と述べた。しかし、コロナ禍に苦しむ事業者らの怒りや不信は容易には収まらない。

 給付金申請には、感染拡大前の2019年に設立したペーパーカンパニーが使われていた。国家公務員の副業には強い制限が課されている。なぜこうした会社を保有していたのか疑問だ。

 不正は綿密に計画して行われた上、発覚しそうになると申請時の電子データを廃棄するなど、証拠隠滅を図った疑いがある。

 経産省は事態を重く受け止め、原因の究明を徹底し、監督責任を明確にしなければならない。

 総務省や農林水産省では、業者との癒着が政策をゆがめた疑いが出ている。今回の事件で、行政に対する国民の不信感が一段と深まることは避けられまい。

 霞が関の官僚機構は、少子高齢化や格差といった社会問題に直面する日本のかじ取りを担う。政策立案能力だけでなく、高度な倫理観や公正さが不可欠だ。

 社会に貢献したいという志を持った人材が集まらなければ、公共サービスの劣化につながる。

 だが、今年度のキャリア官僚の採用試験は、申込者数、倍率ともに過去最低を更新した。

 霞が関は地盤沈下が進み、若者にとって魅力的な職場ではなくなりつつある。

 いかに良質な人材を確保するのか。モラルや規律を保つ手立てをどう講じるのか。政府全体で考えなければならない。

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