氷河期世代の44歳が公務員に 100倍超の「狭き門」と支援の限界

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
さいたま市に採用された村田浩さん=さいたま市浦和区のさいたま市役所で2021年5月12日、山越峰一郎撮影 拡大
さいたま市に採用された村田浩さん=さいたま市浦和区のさいたま市役所で2021年5月12日、山越峰一郎撮影

 政府の就職氷河期世代支援方針を受け、県とさいたま市では2021年度に計12人が採用され、4月から正規職員として働き始めた。エンジニアや司法書士など専門的なスキルを持つ人材も登用され、それぞれ行政の仕事に取り組んでいる。一方で年齢以外の要件を設けなかったため、志願倍率はいずれも100倍を超える「狭き門」に。非正規雇用を脱することができず苦しむ氷河期世代への就職支援策としては限界も見えるが、県とさいたま市は今後もこの世代の採用に取り組む方針だ。【山越峰一郎】

職員「やりがい」、支援に限界も

 氷河期世代は1993~2004年ごろに学校卒業期を迎えた世代を指すことが多く、おおむね35~50歳くらいの世代を言う。19年の政府の経済財政諮問会議では、3年間で30万人を正社員化する方針が決まり、総務省も全国の自治体に積極採用を促した。無年金による将来的な生活保護費増大が予想され対策が必要だったことや、中小企業の人手不足が続いていたことも影響したとされる。

 さいたま市の募集に申し込んだのは830人。37人が筆記試験を通過し論文と集団・個別面接に臨み、8人が採用された。全員大卒で平均年齢は42歳。男性5人、女性3人だった。うち3人が応募時に無職、1人が非正規だった。8人中2人は新卒時に正規の職を得られなかったという。

 市民税課の村田浩さん(44)は東京理科大を01年に卒業した。当時は重工業を志望し15社に応募したが内定を得られず、エンジニアの派遣会社に正社員として就職した。「『理系のスキルを生かせる』と、ほっとした一方、時代が悪かったという気持ちも少しあった」と吐露する。

 20年間で半導体製造装置会社など3社へ派遣され、回路設計の自動化や、海外への事業移管など正社員と変わらない基幹的な職務を担ってきた。低い収入ではなかったが、正社員の給与は村田さんの1・5倍程度あった。

 ただ、公務員転職を決意した理由は子供との時間が取れないためで、面接では同市が掲げるデジタルトランスフォーメーション(ITを活用した業務改革)に貢献できるとアピールした。

 同市は氷河期世代の採用にあたり、経験者採用と同様に他自治体の公務員の経験年数を100とすると、民間企業を80、フルタイムの非正規を50、パートタイムを25として計算。村田さんは新卒職員の主事より1階級上の主任として採用されたこともあり、年収は転職前と同水準だ。

 県にも945人の応募があり、書類選考を通過した152人が筆記試験を受けた。14人が面接に臨み、男性2人、女性2人を採用した。平均44歳で、全員が正社員と非正規を経験しているという。

 東部中央福祉事務所に配属された男性(47)は、大学卒業後に格闘家を目指してアルバイト生活をしていたが腰を痛め断念。法律事務所と広告会社法務部で計約20年働いた。その間に司法書士試験に合格し、生活困窮世帯を支援。「行政の立場で助けたい」と転職を決意した。経験者採用と異なり、氷河期採用は新卒と同じ「主事」として配属されるため、年収は激減したが、「やりがいを感じている」と目を輝かせる。

県、民間支援事業

 県は他にも、「正社員になろうプロジェクト」で氷河期世代の民間企業への正社員就職を支援している。20年度は101人が正社員として採用された。参加者の中には氷河期の影響ではなく結婚や出産でパートや専業主婦となった女性もいたが、県から委託されたコンサルティング会社は「大半は不本意ながら非正規となり、転職できるスキルやノウハウを身につける機会を得られず、同プロジェクトがきっかけで正社員になれた」とみている。今年度もプロジェクトは継続しており、8月24日には合同企業説明会・面接会が開かれる。

次に読みたい

あわせて読みたい

注目の特集