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まいにちボードゲーム

日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。

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「トラヤヌス」 マンカラを駆使してローマ帝国に栄光を

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アフリカから東南アジアまで広く遊ばれている伝統ゲーム「マンカラ」=ジーピー社のホームページから 拡大
アフリカから東南アジアまで広く遊ばれている伝統ゲーム「マンカラ」=ジーピー社のホームページから

 「マンカラ」という伝統ゲームがあります。アフリカから中東、東南アジアまで広く遊ばれ、紀元前15世紀のエジプトに記録が残る世界最古のボードゲームの一つ。ルールはいくつかバリエーションがありますが、一番単純なものは、自分の陣地の一つの皿の中にある駒(豆だったり石だったりします)を全部取り出し、種まきの要領で隣の皿に一つずつ配っていき、自分の陣地の全ての皿から駒を早くなくせば勝ちというもの。現代ボードゲームでは、このように駒を一つずつ配っていくという仕組み自体を「マンカラ」と呼ぶこといが多いのです。メカニクスとして「マンカラ」を取り入れた作品を三つ紹介します。

ローマ至高の皇帝とともに

ローマ帝国が最も繁栄したトラヤヌス帝の時代に、有力な一族として外征、内政に尽力する「トラヤヌス」 拡大
ローマ帝国が最も繁栄したトラヤヌス帝の時代に、有力な一族として外征、内政に尽力する「トラヤヌス」

 <四頭の白馬の引く戦車を御す、金糸入りの紫の大マントに緑の月桂冠(げっけいかん)を頭上にした、長身で堂々とした体軀(たいく)のトライアヌスは、ローマ人の眼(め)には、帝国の運命を託すに最適な人に見えたことだろう。(塩野七生「ローマ人の物語Ⅸ 賢帝の世紀」)>

軍事、交易、建築などさまざまな分野で勝利点を得る 拡大
軍事、交易、建築などさまざまな分野で勝利点を得る

 ローマ五賢帝の一人・トラヤヌス帝(53~117年)は、ダキア(現在のルーマニア)などを征服し、帝国は最大の領土を得て繁栄を誇っていました。「トラヤヌス」は、この「至高の皇帝」の時代の貴族として、内外で権力を増大させることを目的とします。

 ゲームボードを広げると、イタリア半島を中心とした地図上にさまざまな要素が描かれています。属州に自分の駒を送り込んで勝利点を得る軍事▽貿易品をそろえて出荷する港▽労働者を配置して建物を建てる建設▽発言力を増して勝利点を得る元老院――など。個々のアクションは、この手の戦略ゲームとしてはそれほど複雑なものではありません。問題はこのアクションがいつできるのかという点なのです。

やりたいアクションが選べない

皿に載ったアクション駒を、マンカラのように時計回りに一つずつ配り、配り終えた皿の内側に書かれたアクションを実行。その際、外側のトラヤヌスタイルとアクション駒の色がそろえばボーナスがもらえる 拡大
皿に載ったアクション駒を、マンカラのように時計回りに一つずつ配り、配り終えた皿の内側に書かれたアクションを実行。その際、外側のトラヤヌスタイルとアクション駒の色がそろえばボーナスがもらえる

 個人ボードには、円形に配置された六つの皿に最初2個ずつのアクション駒が置かれています。プレーヤーは手番になると、皿の一つを選び、アクション駒を全て手に取って時計回りにマンカラの要領で一つずつ皿に配っていって、配り終えた皿の内側に記されたアクションを実行します。なので、やりたいアクションがあっても、皿にある駒の数によっては選べないことも。個々のアクションは他プレーヤーとの早取り要素があってもたもたしてはいられない。アクションの順番を考えて、手元のマンカラの動きを綿密に計算する必要があります。

 さらに困ったことに、皿の外側に置かれたトラヤヌスタイルに描かれた駒の色と配り終わった地点のアクション駒の色が一致すればボーナスがもらえるという仕掛け。「この皿の駒を配っていけばボーナスがもらえるけど、今やりたいアクションとは違うしなあ」と悩みは尽きません。

 2手先、3手先を読んで手元のパズルを解きながら全体では他プレーヤーと競争する。名作の呼び声高いのも納得の面白さです。

「クルセイダーズ」 異教徒追って東へ東へ

十字軍の時代の宗教騎士団がテーマの「クルセイダーズ:御心のままに」 拡大
十字軍の時代の宗教騎士団がテーマの「クルセイダーズ:御心のままに」

 日本人にはなじみの薄いテーマですが、11世紀から始まる十字軍の時代、修道士でありながら剣をとって戦う宗教騎士団(騎士修道会)という組織が相次いで設立されました。最初は欧州からエルサレムに向かう巡礼の警備や救護などが主な任務でしたが、当時では珍しい常備軍として十字軍と共にイスラム勢力と戦ったり、教皇からの特権を生かして金融業に進出したり。有名な騎士団としてテンプル騎士団▽ホスピタル騎士団(聖ヨハネ騎士団)▽チュートン騎士団――があります。

各プレーヤーは宗教騎士団の長として建物を建てたり、異教徒を征服したりする 拡大
各プレーヤーは宗教騎士団の長として建物を建てたり、異教徒を征服したりする

 「クルセイダーズ:御心(みこころ)のままに」では、プレーヤーは宗教騎士団の長として異教徒(プロイセン人、スラブ人、サラセン人)と戦い、教会や城、農場などを建設して騎士団の影響力を競います。こちらも手元の個人ボードでくさび形の6エリアに置かれたアクション駒を配っていくマンカラ方式。アクションは騎士駒を進める移動▽騎士を補佐する軍団を創設する召集▽敵を倒す聖戦▽勝利点がもらえる影響力▽さまざまな建物を建てる建設――の五つで、移動だけ2カ所用意されています。

パワーを集めるタイミングを見計らって

個人ボードのマンカラ。「トラヤヌス」と異なり、移動元のアクションを実行。黄色い駒の数でアクションのパワーが決まる 拡大
個人ボードのマンカラ。「トラヤヌス」と異なり、移動元のアクションを実行。黄色い駒の数でアクションのパワーが決まる

 「トラヤヌス」と違ってアクション駒は1色。配りきった場所のアクションではなく、駒を手に取った起点となる場所のアクションを実行。この時、手に取る駒の数がアクションのパワーとなります。例えば移動なら、3パワーあれば騎士1人を3マス移動。聖戦ならば、敵の現時点の戦力以上のパワーがあれば成功といった具合。駒を散らばらせると選択肢が増える一方パワーが弱くなり、1カ所に固めるとパワーはあるものの選択肢が減ります。また、大きなパワーを使うと、当然次の手番には駒が散っています。どのタイミングで駒を集めるかがキモになります。

 騎士団はそれぞれ特殊能力を持った10種類が用意され、リプレー欲も高まります。十字軍という西洋中心主義的なテーマにどうにも違和感があるものの、1時間程度でマンカラメカニクスが味わえる佳作と言えるでしょう。

「フィンカ」 果物収穫して配達

スペイン・マヨルカ島の農家となり果実を収穫しては出荷する「フィンカ」 拡大
スペイン・マヨルカ島の農家となり果実を収穫しては出荷する「フィンカ」
左上の風車がプレーヤー共通のマンカラとなり、6種類の果物を収穫できる 拡大
左上の風車がプレーヤー共通のマンカラとなり、6種類の果物を収穫できる

 最後に紹介する「フィンカ」は、厳密に言えばマンカラとは言えませんが、「マンカラ風」の楽しい作品なので取り上げました。地中海に浮かぶスペイン・マヨルカ島は、風光明媚(めいび)な観光地。レモンやイチジクなど豊富な果物の産地でも知られます。

自分のいる風車に置かれた駒の数で移動距離を、到達する風車に置かれた駒の数で収穫量を決定。青プレーヤーなら、時計回りに2マス移動してアーモンドを3個収穫できる 拡大
自分のいる風車に置かれた駒の数で移動距離を、到達する風車に置かれた駒の数で収穫量を決定。青プレーヤーなら、時計回りに2マス移動してアーモンドを3個収穫できる

 プレーヤーは農家として6種類(イチジク、オリーブ、ブドウ、オレンジ、レモン、アーモンド)の作物を収穫。ロバの荷車に載せ需要に応じて出荷すると勝利点が得られます。ゲームボード左上の大きな風車が「マンカラ風」の収穫場所。各プレーヤーは自分の色の駒を3個(4人戦)風車の羽根に置いておき、手番になったらその1個を動かします。他プレーヤーを含めたスタート地点の駒の個数分、時計回りに進み、移動先にある駒の個数だけ羽根に描かれた果物をゲット。上記2作品と異なり共通の場所をぐるぐる回るため、次に自分の手番が来た時には状況が一変。長期的な計画がなかなか立てられません。難解なパズルにうなるというよりも、その場その場で最適解を探すファミリーゲーム。やや入手しにくいのが玉にキズでしょうか。【野地哲郎】=次回は7月17日掲載

「トラヤヌス」データ

 2~4人用◆所要時間60~120分◆12歳以上対象◆シュテファン・フェルト作◆2011年初版

「クルセイダーズ:御心のままに」データ

 2~4人用◆所要時間60~90分◆14歳以上対象◆セス・ジャフィー作◆2017年初版

「フィンカ」データ

 2~4人用◆所要時間45分◆10歳以上対象◆ラルフ・ツアリンデ、ヴォルフガング・ゼントカー作◆2009年初版

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