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この国はどこへ コロナの時代に 「ひきこもり」を取材するジャーナリスト・池上正樹さん 58歳

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池上正樹さん=内藤絵美撮影
池上正樹さん=内藤絵美撮影

自助の強調で「8050」窮地に

 高齢の親と中高年の子どもの同居世帯が生活に行き詰まる「8050(ハチ・マル・ゴー・マル)問題」が近年、顕在化している。コロナ下で人と人とのつながりが希薄になり、当事者や家族らは新たな課題に直面している――。そんな声を耳にして、長年「ひきこもり」を取材してきたジャーナリストの池上正樹さん(58)に久しぶりに話を聞きたくなった。

 池上さんはひきこもりに関するルポなどを多数発表してきた「現場百遍(ひゃっぺん)」の人である。同時に、当事者や家族で作る家族会の全国組織「KHJ全国ひきこもり家族会連合会(家族会)」の広報担当理事も務める。新型コロナウイルス感染のパンデミック(世界的大流行)が当事者らに与える影響を尋ねると、少し考えて「二極化しているんですよね」と語り始めた。

 池上さんによると、コロナ以前は、特に成人のひきこもり当事者にとって、自宅に居続けることへの周囲の冷たい視線が大きな精神的負担になってきたという。近所の目を気にして平日昼間は出歩けないため、深夜に散歩をしたりコンビニに行ったりするという人もいるくらいだ。だが、この1年でテレワークが浸透し、平日昼間も多くの人が自宅で過ごすようになった。「自宅にいても奇異の目で見られることが少なくなった。そのことに救われている人は多くいます」と池上さんは語る。

 一方で、コロナは8050問題にも影を落とす。高齢の親の中には、感染リスクを恐れて家族会を欠席する人も多い。ネット利用に慣れず、オンラインでの家族会会合への参加が難しい人もいる。家族会側は電話で近況を把握したり、少人数の会合を開いたりと工夫を重ねるが、限界がある。地域から孤立しがちな「8050世帯」をこまめな訪問などで見守ってきた支援現場からは、「面会ができず家族の様子が分からなくなった」という声も寄せられている。

 高齢の親と中高年世代の子どもがともに遺体で発見されたり、子が親の遺体を放置した状態で死体遺棄容疑で逮捕されたりする事例は後を絶たず、…

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