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時の在りか

「靖国」など日本の戦後をテーマに取材を続けている伊藤智永編集委員が、政治を「座標軸」に鋭く論じます。

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戦慄しなかった平地人よ=伊藤智永

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「遠野物語」に登場する信仰神オシラサマ=1973年、藤田君幸撮影
「遠野物語」に登場する信仰神オシラサマ=1973年、藤田君幸撮影

 古い一句が不意に思い出されて、ずっと頭の芯に刺さっている。

 「平地人を戦慄(せんりつ)せしめよ」

 民俗学者の柳田国男が著書「遠野物語」序文に記した。111年前、350部だけ自費出版された岩手県遠野地方の不思議な逸話や言い伝えの小さな聞き書き集である。

 国内の山村で遠野よりさらに物深い所には、まだ無数の山神山人の伝説があるに違いない。どうか多くの人がこれを語って「平地人」を震え上がらせてほしい、というのだ。

 平地人とは山人と対照をなす都会人か。明治の終わり、すでに柳田は、近代化や都市化が社会や意識のあり方を脅かすと危機感を抱いた。

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