障害者に活躍の場を 工場で短時間就労受け入れ 人手不足解消も

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レンゲの成形作業をする山崎さん=新潟県燕市で2021年6月7日午後1時57分、露木陽介撮影 拡大
レンゲの成形作業をする山崎さん=新潟県燕市で2021年6月7日午後1時57分、露木陽介撮影

 福祉事業所に通う障害者の短時間就労を受け入れる取り組みが、新潟県燕市のプラスチック製品製造会社「エンテック」で進められている。障害者の就労機会を拡大すると共に中小企業の人手不足が解消され、双方に利点があるとされる取り組みだ。同社の関藤紘希社長(38)は「障害があっても活躍できるし、企業も助かる。地域貢献にもつながるはずだ」と手応えを語った。【露木陽介】

 6月7日の昼下がり。所狭しと工作機械が並び作業音が響くエンテックの工場で、山崎隼季さん(28)が黙々と手作業をしていた。機械で成型されたプラスチック製のレンゲを工具で研磨し、手際よく仕上げていく。「ちょっと難しい作業もあるけど仕事は楽しい。頑張って続けたい」。週1、2日、こうした作業に従事している。

 山崎さんの傍らには生活支援員の石井由美子さん(57)が常に寄り添う。会社の指示を伝えるなどコミュニケーション支援が主な役目で、普段はNPO法人「アビリティ燕」(燕市)の福祉作業所で、山崎さんら障害者をサポートしている。

 工場で働く姿を間近で見てきた石井さんは「障害があっても短時間であれば能力を最大限発揮できる。これまでとは違う職域でも社会の一員でいられるのは本人にとってありがたい」と短時間就労を評価した。

従業員27人、人手不足に悩み

 エンテックは主にスプーンなど業務用プラスチック食器を製造販売し、従業員27人のいわば中小企業だ。繁忙期にはベテラン従業員たちが製造機械の操作や製品の箱詰めなど単純作業に追われ、人手不足に悩まされてきた。そうした中、関藤社長が地元商工会のつながりから知ったある事業に着目した。

 人材会社「バウハウス」(新潟市中央区)が手掛け、短時間就労を希望する障害者と企業ニーズとをマッチングする事業だった。仕事の内容は営業前の飲食店や企業での清掃作業が中心だったが、担当者から話を聞き「うちの工場の単純作業も任せられるのではないか」と考えたという。

 雇用形態は障害者との直接契約ではなく、エンテックとバウハウスとの間で契約を締結。バウハウスが山崎さんと石井さんのような障害者と生活支援員のペアをローテーションでエンテックに派遣する形態だ。会社からの指示は生活支援員を通じて障害者に伝えるため、関藤社長は「安心感につながっている」と話す。

慣れれば仕事の質に遜色なく

エンテックの関藤社長。手にしているのはレンゲの箱詰めの仕方を指示する際に使う写真=新潟県燕市で2021年6月7日、露木陽介撮影 拡大
エンテックの関藤社長。手にしているのはレンゲの箱詰めの仕方を指示する際に使う写真=新潟県燕市で2021年6月7日、露木陽介撮影

 関藤社長によると、一日の就労時間は2時間程度。プラスチック製品のレンゲの生産工程で、大まかに成型された半製品の箱詰め▽形を整える機械へのセッティング▽手作業による研磨――といった業務を任せている。

 受け入れ当初はどうしても時間がかかってしまったり、数え間違いをしてしまったりする人もいた。習熟度に個人差はあるものの、慣れてくると1カ月程度で健常者の8割ほどの生産性に達し、仕事の質は遜色なくなった。

 就労環境づくりも工夫した。例えば指示の伝え方。「レンゲを45個ずつ箱に詰めてほしい」と指示をしても、大きい数を数えられない人には難しい場合がある。そこで箱の中を仕切りで九つに区切り「一区切りにつき5個ずつ並べる」と説明。言葉だけでは伝わりにくい場合は完成形の写真を用意し、まねてもらった。こうした工夫をしても大きなコストはかからないという。

「うちの会社でも」手応え

九つに仕切られた箱。レンゲを一区切りに5個ずつ詰めるよう工夫されている=新潟県燕市で2021年6月7日、露木陽介撮影 拡大
九つに仕切られた箱。レンゲを一区切りに5個ずつ詰めるよう工夫されている=新潟県燕市で2021年6月7日、露木陽介撮影

 エンテックは2020年1月から障害者の短時間就労受け入れを始め、新型コロナウイルスの影響による中断を経て同7月に再開した。工場では現在、5人ほどが就労している。

 21年2月には地元企業向けの工場見学を実施。実際に働いている様子を見てもらった。地元には人手不足などに悩んでいる中小企業が少なくはなく、関藤社長は「『うちの会社でもできるかもしれない』と手応えをつかんだところも多かったようだ」と振り返る。

 関藤社長は今後の普及に期待し、「障害を持つ人の中には単純作業を繰り返すことが得意な人もいるし、エンテック以外にも活躍できる場はたくさんあるはずだ。障害者と企業の双方にメリットのある取り組みが普及し、地域貢献にもつながればうれしい」と語った。

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