臓器移植が大幅減 コロナ禍の医療逼迫が影響か 現場から不安も

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補助人工心臓装置を付け、心臓移植を待つ青山環(たまき)さんと、父親の竜馬さん、母親の夏子さん=大阪府吹田市の大阪大病院で2016年3月8日、生野由佳撮影
補助人工心臓装置を付け、心臓移植を待つ青山環(たまき)さんと、父親の竜馬さん、母親の夏子さん=大阪府吹田市の大阪大病院で2016年3月8日、生野由佳撮影

 2020年、国内の臓器移植件数が大幅に減った。新型コロナウイルスの感染拡大で、救急医療の現場が逼迫(ひっぱく)したことなどが影響したとみられる。コロナ禍が続いているため、臓器移植を担う医師は危機感をあらわにし、移植待機患者の支援団体からは、命をつなぐ臓器移植が後回しにならないよう切実な声が上がる。【生野由佳/デジタル報道センター】

 日本臓器移植ネットワークによると、国内の臓器移植件数は1997年の臓器移植法の施行以降、ほぼ増加傾向にあったが、19年の480件から20年は318件に大幅減。同様に増加傾向にあった脳死後の臓器提供件数も、19年の97件から20年は68件に大幅に減った。

 一方で、臓器移植の希望登録者(待機者)数は増加傾向にあり、心臓移植を希望する人は19年の793人から20年の898人と大幅に増えた。これらの数値の推移からはこの1年間、臓器移植が進まなかったことが分かる。背景には20年からのコロナ禍の影響が指摘され、今年も同様の状況が続いている。

大阪の病院 コロナ以外のICU“閉鎖”

 今春以降の「第4波」の感染拡大が深刻だった大阪で象徴的な出来事があった。

 大阪大病院(大阪府吹田市)が府の要請を受け、5月1~10日に集中治療室(ICU)の全30病床をコロナ専用に変更したのだ。この病院は、臓器移植手術を実施する関西の拠点病院で、99年に臓器移植法に基づく初の脳死心臓移植を行うなどした。移植を受けた患者は手術後にICUでの管理が必要なため、コロナ専用になったことで、臓器提供があった場合でも手術を行えない状況になった。

 実際にこの間、臓器移植手術の可能性はあった。阪大病院の上野豪久(たけひさ)・移植医療部長(51)は「臓器提供者が現れたという連絡がこの間、数件ありました」と認めた上で、「ただし、移植で救える命があったのか、患者に移植適合者がいたかどうかは分かりません」と説明する。

 臓器提供には多くの適合条件があり、本来は提供者情報があれば適合の可否を検討するが、阪大病院で検討することなく、受け入れを断っていた。

 上野部長は「府の要請を受け、ICUがコロナ専用になりましたが、病院として苦渋の判断でした。コロナ以外の患者さんに申し訳ない思いがあります」と振り返る。ICUは、いわば生命の危機にある患者にとって最後のとりでだ。コロナ禍の終息が見えない中で、再び同様の対応を取ることはあり得るのか。「阪大病院は、コロナ以外の患者さんを受け入れる社会的な義務があると考えています。臓器移植は対応できる病院が限られ、手術前の管理もいるので転院も難しい状況があります」。そして、こう続けた。「私の一存や病院の一存では決められませんが、コロナ以外の患者さんに対応するICUを“閉鎖”する事態は極力ないようにしたいです」。医療の現場を守る医師の本音だった。

コロナによる面会禁止も影響

 99年に前述の脳死心臓移植に関わった、大阪府吹田市の国立循環器病研究センターの福嶌教偉(のりひで)移植医療部長(65)は、「数値で示すデータはない」とした上で、移植医療が縮小している背景について「コロナの感染拡大が救急医療を逼迫している実態がある」と指摘する。その一つに「脳死に至るような重症患者が、臓器提供が可能な救急病院に搬送されていない可能性がある」と話す。

 臓器移植法の運用指針により、病気などから脳死判定した患者の臓器提供ができる施…

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