静岡県熱海市の土石流災害で、大規模な盛り土の崩落が被害の拡大につながったとの見方が強まっている。
県は、崩落した土砂の総量約10万立方メートルのうち、ほぼ半分を占めると推計している。
現場はもともと谷で、大量の土で埋められていた。長雨でたまった地下水がこの盛り土によってせき止められた状態となり、崩落を引き起こした可能性を指摘する専門家もいる。
最初に崩れたのが盛り土だったかどうかは、現時点で不明だ。
しかし、一般的に盛り土の強度は自然の地盤に比べて弱いとされる。今回のケースでは、住宅が建ち並ぶ傾斜地の上方に大規模な盛り土があった。
県は、これが土石流の原因になったかどうかを調べている。工法に問題はなかったのか、管理は適切だったのか。調査を徹底しなければならない。
現地には不動産関連会社が2009年ごろ、建設残土を運び込んだという。ダンプカーが出入りするのを目撃した住民から「雨が降ったら危ない」と不安の声も上がっていた。
土砂の搬入は県土採取等規制条例に基づき、熱海市に対して届け出がされていた。行政の監視機能が十分に働いていたかどうかも問われる。
大規模な宅地造成に伴う盛り土については、国が06年から安全対策を強化してきた。1995年の阪神大震災や04年の新潟県中越地震で、地滑りや液状化などの被害が相次いだのがきっかけだった。
だが、今回のような盛り土は、宅地ではないため対象外だ。
国はこうしたケースが他の地域にもないか、全国で点検する考えを示している。危険箇所の洗い出しが急務だ。
今回の被災地と同じ土砂災害警戒区域は全国に約66万カ所、土石流の恐れがある「土石流危険渓流」は約18万カ所ある。
日本は国土の7割を森林が占める。平野が狭いために、山間部を切り開いて造成された地域に住む人も多い。
気候変動の影響で、豪雨による土砂災害の危険は高まっている。国と自治体には、対策を徹底して住民の命を守る責任がある。