「東京は焼け野原だ」ウーバー配達員が緊急事態宣言下に見たもの

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
映画「東京自転車節」のワンシーン=配給会社ノンデライコ提供
映画「東京自転車節」のワンシーン=配給会社ノンデライコ提供

 新型コロナウイルス禍で収入はゼロ、所持金は300円あまり。追い詰められた28歳の男性が選んだのは、東京への「出稼ぎ」だった。初めて緊急事態宣言が出された1カ月間、料理宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員として自転車をこぎ続けた男性は「2020年の東京は焼け野原だ」と感じたという。疾走する自転車から見えた景色はどんなものだったのだろうか。【山下智恵/デジタル報道センター】

仕事なくなり上京、ウーバー配達員に

 男性は、青柳拓さん。大学で映画を学んだあと、地元の山梨県で映像製作の仕事や運転代行のアルバイトをしながら映画を作る機会をうかがっていた。しかし、新型コロナの感染拡大で仕事がなくなり、収入がゼロに。地元にはほかに仕事がなく、出稼ぎを決意した。「何よりお金がなく、稼がないといけませんでした。もちろん人がいなくなった東京にも興味がありました。自由に動ける自転車配達員の視点から記録すれば、何か見えてくるのではないかと考え、撮影を始めました」

 緊急事態宣言下の20年4~5月の東京。スマートフォンや小型カメラを使って自身や身近な風景の撮影を続けた。それをまとめたドキュメンタリー映画「東京自転車節」が、今年7月10日に公開される。疾走感あふれる配達員の視点と、青柳さんの独白を中心に描かれている。

 ウーバーイーツは、配達員が個人事業主として契約する料理配達サービス。配達員は企業ロゴの入ったバッグを購入し、さらに自転車などの装備品は全て自前で用意する必要がある。日本では16年9月にサービスを開始したが、新型コロナによる外出自粛の影響で需要が急拡大し、配達員を始める人も増えた。配達員は気軽になれて好きな時間に働ける一方で、個人事業主のため就業中に事故に遭っても労災保険が適用されないことや、装備費用の負担が重いことが問題点として指摘されている。

 青柳さんはこう振り返る。「実は最初は、配達員に憧れもあったんです。人の流れが途絶えた東京で人と人をつなぐような、都市に血を通わすイメージがあった。でも、実際は『置き配』という配達する商品を玄関前に置くケースがほとんどで、お客さんと顔を合わすこともありませんでした。誰の役に立ったのかすらわからない。自分はシステムの一部になっているだけなんだと気付きました」

 青柳さんの違和感は次第にウーバーの「システム」に向けられていく。…

この記事は有料記事です。

残り1517文字(全文2505文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者
すべて見る

注目の特集