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熱海土石流

2021年7月2~3日、東海や関東甲信越地方で激しい雨が降りました。静岡県熱海市では土石流が発生、捜索が続いています。

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「被害拡大要因」盛り土、いつ誰が 繰り返された法令違反と指導

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大規模土石流で被災した静岡県熱海市伊豆山の現場。県警や消防、自衛隊が捜索や救助活動を続けている=静岡県熱海市で2021年7月9日午後2時18分、本社ヘリから 拡大
大規模土石流で被災した静岡県熱海市伊豆山の現場。県警や消防、自衛隊が捜索や救助活動を続けている=静岡県熱海市で2021年7月9日午後2時18分、本社ヘリから

 静岡県熱海市の伊豆山(いずさん)地区で起きた土石流災害は、10日で発生から1週間となる。住民らを巻き込んだ土石流。この1週間で、土石流の起点周辺の盛り土が被害の拡大につながったとの見方が強まっている。土石流はなぜ発生したのか。

 土石流の起点周辺にあった盛り土。元国土交通省技官の難波喬司・静岡県副知事が「工法が不適切で、盛り土の土砂が災害を甚大にした」と説明するなど、土石流災害との関連を指摘する意見が出ている。

 盛り土があった場所は海岸から約2キロの逢初(あいぞめ)川最上流部だ。神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)が2006年にこの地点を含む上流一帯の土地を取得し、盛り土を造成した。同社が静岡県土採取等規制条例に基づき、07年3月に熱海市に出した届け出によると、0・94ヘクタールの土地に3・6万立方メートルの盛り土をする計画だった。

 ところが、土石流発生後に静岡県が10年1月の国交省のデータなどを基に推計すると、盛り土の総量は届け出の1・5倍の5・4万立方メートルに上っていた。崩落災害を防ぐ観点から、県の技術基準は盛り土の高さを原則15メートル以内と制限しているにもかかわらず、問題の盛り土の高さは最大50メートルに達していた可能性がある。

熱海市で起きた土石流のメカニズム 拡大
熱海市で起きた土石流のメカニズム

 流れた土砂の総量は5万5500立方メートル。大半は盛り土とみられ、起点以外では土砂の流出は限定的だったとされる。起点が盛り土の部分なのか、山の地肌部分かは明確ではないものの、県は盛り土が被害を大きくした要因とみている。

 盛り土を造成した不動産管理会社を巡っては、法令違反の発覚と行政指導が繰り返された。07年4月、盛り土の造成面積が条例で規制する1ヘクタールを超えることが判明し、県は翌月に文書で指導した。この違反は是正されたが、10年8月には産業廃棄物の混入が確認されたため、県が撤去を求めた上、熱海市は翌月に工事の中止を指導した。しかし同社は行政の指導に従わず、是正されないまま土地は11年2月、東京の企業グループ前会長に売却された。

 誰がいつ、どれだけの盛り土をしたのか。住民の間には「11年以降も土砂を積んだトラックが上流へ向かうのを見た」との証言が複数ある。盛り土については「量と期間からみて、前の所有者(小田原市の不動産管理会社)だけが搬入したのではない」との見方もあり、県は経緯を詳しく調べる考えだ。

 土石流が発生した翌日の4日に小田原市の不動産管理会社側から連絡を受けた蜂谷英夫弁護士によると、会社側は「残土を搬入したけれど許可を取っているので問題はない。責任はない」と語ったという。現所有者(前会長)の代理人の河合弘之弁護士によると、購入時に盛り土の説明はなく、前会長は盛り土の状況も把握していなかったとされる。

 盛り土があった土地を巡って、県や熱海市は行政指導を繰り返しながら、是正を強く促す命令を出す対応には至っていない。違反を重ねていた会社への対応として適切だったのか、検証が求められている。【山田英之、内橋寿明】

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