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熱海土石流

2021年7月2~3日、東海や関東甲信越地方で激しい雨が降りました。静岡県熱海市では土石流が発生、捜索が続いています。

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熱海土石流「望み捨てない…」無事待つ人なお SNSで情報呼びかけ

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太田洋子さん=近隣住民提供 拡大
太田洋子さん=近隣住民提供

 静岡県熱海市伊豆山地区の土石流災害から1週間となる10日、現場で見つかった1人の遺体の身元が太田洋子さん(72)と新たに判明した。一方、行方不明者の家族の中には「最後まで望みは捨てない」と、ツイッターで情報提供を求め続ける人もいる。

 「何とか生きていてほしかった」。太田さんのいとこ、高橋薫さん(72)は10日、そう語った。伊豆山地区で生まれ育った2人は同い年。幼稚園から中学まで一緒だった。この日の朝、安置所で太田さんの遺体と対面した。遺体の表情は穏やかに見えた。高橋さんは遺体に「頑張ったな」と声をかけ、隣ですすり泣く太田さんの妹、山口きく江さん(70)の肩をそっとたたいた。

 1週間前の3日午前。山口さんは太田さんと一緒にいた。山口さんが所用で近所の知人宅に行った直後、土石流が地区を襲った。すぐに知人の一人が太田さんと電話で話をし、避難を促したが、太田さんの悲鳴を残して通話は途絶えた。

 その頃、外出していた高橋さんは人づてに太田さんの家が流されたと聞いた。翌朝、家が跡形もなくなっているのを見て絶句した。

 声が聞きたい――。高橋さんの願いはかなわなかった。「泥の中から出てきてくれただけでも……」。今はそう思っている。

瀬下陽子さん=長男提供 拡大
瀬下陽子さん=長男提供

 土石流の後、今も19人が行方不明のままだ。その一人、瀬下陽子さん(77)の長男(53)=千葉県=は土石流発生直後、瀬下さんに電話をかけたものの、つながらなかった。無料通信アプリの既読マークもつかない。テレビやインターネットの映像では、家があったはずの場所は大量の土砂で埋もれていた。

 駆けつけたいけれど、捜索活動の邪魔になってはいけない。「<瀬下陽子>を避難所で見た、話したという方からの情報をお待ちしています」。ツイッターで情報を求めることを決め、着物姿の瀬下さんの写真とともに投稿した。

 瀬下さんが50年以上連れ添う夫(81)と横浜から伊豆山地区に移ったのは約20年前。静かに老後を暮らしたいと選んだ場所だった。夫は3カ月ほど前から入院中で、新型コロナウイルスの影響で面会は制限される中、瀬下さんは病院に通って献身的に支えていた。

 「どうかご無事で」「早く見つかりますように」。多くの人が投稿を拡散し、情報も寄せられた。しかし有力な手がかりはない。

 生存率が急激に下がるとされる72時間が経過した6日午後には、「過去にも72時間経過後も生存救出された方もいるので希望を持って情報収集したいと思います」と投稿した。被災者に向けた生活情報などの発信も続ける。「どんなささいなことでもいいから母の情報がほしい」。母の帰りを待ち続ける。【深野麟之介、金子昇太、駒木智一】

【熱海土石流】

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