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カヌー羽根田卓也「俺は水なんだ」 つかんだ無意識の感覚

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リオデジャネイロ五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで、急流を果敢に攻める羽根田卓也=リオデジャネイロのホワイトウオーター競技場で2016年8月9日、三浦博之撮影
リオデジャネイロ五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで、急流を果敢に攻める羽根田卓也=リオデジャネイロのホワイトウオーター競技場で2016年8月9日、三浦博之撮影

 新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックが1年延期になって以降、カヌー・スラロームの羽根田卓也(33)=ミキハウス=には、節目のたびに胸の内を聞いてきた。緊急事態宣言で練習環境が制限されても、大会開催への批判の声を耳にしたとしても。羽根田のぶれない気持ちには理由がある。

「4位、頑張りました」では許されない

 「自分の競技人生において五輪以上に大切なものはない。1年延期になろうが、五輪がある限りはそこに向かって突き進む。人生で二度と無い母国開催だからこそ、途中で悩んでいる暇はない」

 最初の緊急事態宣言が解除され、自粛期間が明けた2020年7月。羽根田は東京都内の本番会場近くの公園にあるカヌー場にいた。一人、水の感覚を取り戻していた。「今、目の前でできることを淡々とやるだけ」。本番会場が使えないため、一般の人が1回100円でカヌーを体験できる「公園の池」が貴重な場所だった。

 スラロームは全長250メートル程度の人工コースで、片側に水かきのついた1本のパドルで入り組んだ激流を下り、ポールがぶら下がってできたゲートをくぐったり、回ったりしてタイムを競う。羽根田は08年北京五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで14位、12年ロンドン五輪では7位入賞と着実に成績を上げた。16年リオデジャネイロ五輪で3位となり、カヌー競技でアジア人初のメダリストに輝いた。涙と歓喜で沸いた表彰式もつかの間、取材エリアに現れると真っすぐな目で取り囲む報道陣を見て言った。「4年後の追い風になる」。既に頭の中は「TOKYO」に切り替わっていた。

 憧れのメダルを手にし、「五輪での3位と4位の大きな差を実感した」というほど環境は一変した。リオ五輪前に2社だったスポンサーは8社に増えた。スポーツメーカーや高級外車、高級ブランドメーカーなどがつき、「世界的な一流企業に興味をもってもらい自分でいいのかなと思った。ただ、見てくれている人はいるんだなとうれしくも誇らしくもある」と実感を込めた。

 無理もない。9歳でカヌーを始め、高校卒業後に競技が盛んなスロバキアに単身で拠点を…

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