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今年度の最低賃金の目安を決める議論が、厚生労働省の審議会で最終盤に差し掛かっている。新型コロナウイルスの流行下では2度目の改定となる。
2016年度から4年連続で3%以上引き上げられてきた。しかし、昨年度はコロナ禍の影響で、全国加重平均が902円と1円の引き上げにとどまった。
生活できる水準の賃金を保障することが役割だ。だが、時給900円では、フルタイムで週40時間働いたとしても年収200万円に届かない。
日本は国際的に見ても低い。英独仏は、コロナ下でも1~2%程度引き上げている。
正規と非正規という雇用形態の違いで賃金格差が広がらないよう、本格的な引き上げが必要だ。
労使が賃金交渉をする春闘は、コロナ下でも正規社員を中心に賃上げの流れが続いている。
一方、飲食業や小売りなどでは非正規で働く人が多く、最低賃金の影響が大きい。感染拡大の中でも、生活に欠かせないサービスを提供している。待遇改善を図らなければならない。
地域間格差の是正も課題だ。最も高い東京都の1013円と、最低額の秋田県などとの間では200円以上開きがある。物価の違いを加味しても、地方の改善の遅れは明らかだ。
昨年度は賃上げより雇用維持を優先する姿勢だった政府も、「より早期に平均1000円」の目標を前面に打ち出している。
ただ、経営者側は業績悪化を理由に据え置きを求めている。
確かに、飲食業や宿泊業などは、感染拡大で需要が大きく減少した。引き上げれば経営への影響は避けられない。
こうした事業者が賃上げできるように、政府は経営の改善を後押しすべきだ。現場の声を聞きながら、助成制度を拡充することが欠かせない。
大企業の役割も大きい。製造業では、下請け企業が人件費の増加分を製品価格に転嫁せざるを得ない場合もあるだろう。実態に応じて配慮すべきだ。
コロナ不況下でこそ、政府は最低賃金を引き上げる環境を整えなければならない。それが、経済の底上げにつながる。