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小説「無月の譜」

将棋の駒をめぐる探求の物語。失われた名品の駒を求め、ある挫折感を抱えた男が旅に出ます。作・松浦寿輝さん、画・井筒啓之さん。

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小説「無月の譜」

/213 松浦寿輝 画・井筒啓之

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 植島さんも、もはや文面を一字一句忠実に諳(そら)んじているわけではないようで、それは当然だし、仕方ないことだろう。それでも、彼女が伝えてくれた内容じたいに関しては、十分以上に明快で、誤解が生じる恐れはまずなかろうと思われた。「自作の駒」という言葉を彼女は何度も繰り返していた。大叔父からの手紙にも、実際にそういう言葉が使われていたに違いない。

 ――あの……と、あのとき万平ホテルのカフェテラスで竜介は質問してみたのだった。その駒ですけど、彼はそれを教会に「寄付した」と書いてきたんでしょうか、それとも「これから寄付するつもりだ」と書いてきたのか……?

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