また一つ崩れた原発神話 コスト上昇、エネルギー政策への影響は
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政府が12日に示した2030年時点の各電源の発電コストの新たな試算で、政府や電力業界が原発推進のよりどころにしてきた「安さ」の根拠が揺らいでいる。安全性に続き、また一つ「原発神話」が崩れたことで、原発を重要な電源と位置付けてきた政府の方針や今後のエネルギー政策はどうなるのか。
コストの上限は試算できず
原発の1キロワット時あたりの発電コストが、前回15年試算時の「10・3円以上」から「11円台後半以上」に1割程度上昇したのは、敷地外への放射性物質の拡散防止といった安全対策費が、1基当たり約1369億円と15年試算時(約601億円)から倍増したためだ。11年に起きた東京電力福島第1原発事故の処理費用の見積もりが15年の「12・2兆円以上」から「23・8兆円以上」に膨らんだことも響いた。他の電源はコストの上限も算出されているが、原発だけ上限がないのは「事故処理費用がどれだけ増えるか見込みづらい」(経済産業省幹部)ためだ。
一方で、再生可能エネルギーは技術開発や普及によるコスト低減効果を織り込み、事業用太陽光(8円台前半~11円台後半)を筆頭に、住宅用太陽光が9円台後半~14円台前半、陸上風力が9円台後半~17円台前半などと軒並み下がった。前回15年の試算から上昇したのは、原発のほか、二酸化炭素(CO2)排出の対策費用がかさむ石炭火力などにとどまった。
政府や電力業界はこれまで「原子力は最も低廉な電源」と主張し、福島第1原発事故後も再稼働を推し進めてきた。発電コスト試算は…
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