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「付き合いせんことに決めたから」村八分生んだ農村交付金制度

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山に囲まれた集落の周りには田んぼが広がっている=大分県宇佐市で2021年6月12日、高橋祐貴撮影
山に囲まれた集落の周りには田んぼが広がっている=大分県宇佐市で2021年6月12日、高橋祐貴撮影

 大分県内のある小さな集落を舞台にした訴訟で裁判所が今年5月、集落内で「村八分」があったことを認める判決を出した。背景を探ると、中山間地域の農村を支援するための交付金制度が、各地で分断を生んでいる実態が見えてきた。

中山間地向け交付金きっかけに亀裂

 2013年5月10日朝、大分県宇佐市内の農村に住む元公務員の男性(72)は野菜の出荷作業中に、地域の長老的存在の住民に車の中に呼び入れられ、こう告げられた。「付き合いせんことに決めたから。市報も配らんし、行事の連絡もせんので、参加せんとってくれ」

 この日の約1カ月前、男性が法事で関西方面に出かけている間に集落の13世帯の住民らは会合を開き、男性を「村八分」とすることを全会一致で決議。翌日には、自治区の戸数が1戸減ったと市に届け出ていた。きっかけとなったのが、国の「中山間地域等直接支払制度」を巡るトラブルだった。

 制度では、集落ごとに協定を締結し、農地の面積や傾斜に応じて交付金が支払われる。男性は09年に母親の介護のためにUターン移住し、11年に親から引き継いだ田んぼで稲作を始めた。しかし交付金を受け取ったことはなく、市に制度の説明を求めても「すべて地域で決めるので、行政はタッチしません」との回答しか返ってこない。

 協定上は以前土地を貸していた知人が男性の田んぼの管理者になっていたことが分かったが、名義変更に応じてもらえず、集落の協定から自分の田んぼを除外するように求めると、自治区長をはじめ住民との関係が悪化し始めた。「金はいらんから、土地を返してくれ」。男性は集落の会合で訴えたが、「外から来て偉そうなことを言うな」などと罵声を浴びせられ、次第に嫌がらせがエスカレートしていった。

数々の嫌がらせに賠償求め提訴

 男性は周囲から口をきいてもらえず、保有する…

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