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少子化考

世界各地を記者が歩きながら、少子化社会の課題や、子どもを持つ意味、家族の幸せとは何かを考えます。

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フランス、出生率1.88の秘密 手厚い家族支援だけではなかった

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ベネディクト・ブランシェさん(右)とエステバンちゃん=パリ近郊で2021年4月9日午前11時、久野華代撮影
ベネディクト・ブランシェさん(右)とエステバンちゃん=パリ近郊で2021年4月9日午前11時、久野華代撮影

 世界各地で記者が歩きながら少子化にまつわる課題や家族を持つ意味について考える連載「少子化考」。韓国、中国に続く3回目はフランスを取り上げる。フランスは先進国では例外的に合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産む子供の数に相当)が1・88(2018年)と高い水準を維持し、「少子化対策のお手本」とも目される。理由を探ると、国の経済的支援の手厚さだけではない要因が見えてきた。【パリ久野華代、中村聡也】

匿名の精子提供で授かった長男

 仏議会は6月29日、これまで異性カップルのみが対象だった人工授精や体外受精などの生殖補助医療を、独身女性や女性同士のカップルにも拡大する法案を可決した。保守派から「一人の父、一人の母から子が生まれるという自然な姿に反する」との猛烈な抗議を受けたが、マクロン政権は押し切った。

 「ようやくこの時を迎えられて、満足しています。大きな一歩です」。パリ郊外のアパートに住む独身女性で会社員のベネディクト・ブランシェさん(40)は言う。ブランシェさんは18年、当時既に独身者にも生殖補助医療が認められていたポルトガルで、匿名の男性から精子の提供を受け、体外受精で長男のエステバンちゃん(2)を授かった。海外渡航による経済的負担の重さなどを経験し、次世代のためにフランス国内での認可を待ち望んできた。

 10代の頃から恋愛や結婚に興味を持てなかった。27歳の時、テレビ番組で独身のままでもドナーから精子の提供を受ければ子供を持つ選択肢があると知り、初めて出産して子育てする未来図を描いた。自分が妊娠・出産できる時間が限られていると感じた34歳の頃、貯金を崩し、独身女性への生殖補助医療が既に制度化されているデンマークに渡航した。人工授精に2回失敗し、ポルトガルの医療機関で試みた体外受精が成功した。37歳の時だった。

 「子を持つことができ、今、私は幸福の中にいます。毎日がバラ色ではないけど、それは子育て中の人ならみんな同じでしょ?」。ブランシェさんは笑顔を見せた。息子には、社会に多様な家族の形があることを、少しずつ教えている。↵

 フランスは13年に同性同士の結婚を法律で認めた。今回、可決された新法は、その際に検討課題とされた同性婚女性への生殖補助医療の適用を実現しただけでなく、平等の観点から独身女性も対象にした。公的医療保険を適用し、子を持つ選択を国として容認・支援する。

 欧州では既に10カ国以上で同様の権利が認められている。だがフランスは伝統的家族観などを重んじる保守派の影響力も強く、紆余(うよ)曲折を経て、多様性を認める社会にたどりついた。

 フランス社会の歩みは、家族のあり方をどう変え、出生率にどう影響を与えたのだろうか…

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