なかったことにされた黒い雨 「区域外」の83歳、歴史を正す闘い
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広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を国の援護対象区域外で浴びた住民ら84人が県と広島市に被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟の控訴審判決が14日、広島高裁で言い渡される。原告全員を被爆者と認めた2020年7月の1審・広島地裁判決では、差別への恐れなどから住民が口をつぐみ、証言が取りこぼされた可能性が指摘された。原告の一人、森園カズ子さん(83)が雨を浴びた場所は「黒い雨が記録されなかった集落」だ。歴史に記されなかった、あの日の記憶。「事実は事実として残さないと」と話す彼女の証言を、ここに刻む。
控訴審判決を控えた6月。広島市中心部から車で45分。安佐北区ののどかな山あいの、住宅や畑に囲まれた小さな更地。一角に残る学校名が彫られた石柱の前に、森園さんは立った。ここは76年前に原爆がさく裂した爆心地から北に約17キロの旧亀山村にあたる。あの日、放射線を帯びた「黒い雨」をここで浴びたが、国の援護対象区域からは外れている。対象となった市中心部は、目の前にある二つの山に覆われて見通せない。森園さんが、山の中腹を指さした。「あの日、あそこに落下傘が飛んできた後、雨が降ってきた」。空を見やり、森園さんがぽつりと話し始めた。「歴史の影に葬られたんじゃと思う、雨を浴びて苦しみながら死んでった人たちは。原爆の影響はあったはずだけど、ここらは認められてないんよ」
降った範囲、今も未確定
米軍が原爆を投下した1945年8月6日。爆発による上昇気流で発生した「きのこ雲」や、火災に伴って生じた積乱雲から「黒い雨」が降った。その雨は放射性物質を含み、汚染されたちりやほこりとともに広範囲で確認された。雨が降り注いだ水や畑の作物、そして呼吸を通して体内に入り込み、内部被ばくを引き起こしたとされる。
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