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「なぜ飲食店ばかり」 酒類提供禁止に不信感 途方に暮れる店長

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店内で作業する居酒屋「根室食堂」新橋店の平山徳治店長。団体客を呼び込むための看板(右)は昨年4月の1回目の緊急事態宣言発令以降、外に出さなくなったという=東京都港区で2021年7月12日、宮間俊樹撮影 拡大
店内で作業する居酒屋「根室食堂」新橋店の平山徳治店長。団体客を呼び込むための看板(右)は昨年4月の1回目の緊急事態宣言発令以降、外に出さなくなったという=東京都港区で2021年7月12日、宮間俊樹撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4回目となる緊急事態宣言が12日、東京都に発令され、都内の飲食店は再び酒類の提供停止を要請された。「なぜ飲食店ばかり標的になるのか」。取引先の金融機関や酒類販売事業者に対し、西村康稔経済再生担当相が飲食店に酒を出させないよう呼びかけを求めたこともあり、店主たちは政府に不信感を募らせている。

 サラリーマンの街と呼ばれる東京・新橋。本来なら平日の夜は仕事帰りの会社員でにぎわうが、この日は雨の影響もあって人通りはまばら。宣言を受けて休業した店も目についた。居酒屋では、ジュースで乾杯する客の姿がみられた。

 「この先どうやってしのげばいいのか」。これまで要請に従い続け、この日から酒類を提供せずに営業する居酒屋「根室食堂」新橋店の店長、平山徳治さん(49)は途方に暮れる。前回の宣言が解除され、酒類の提供が「解禁」になったのは6月21日。わずか3週間で再び提供を止められ、午後8時までの短縮営業も続く。

 同じく酒を出せなかった3回目の宣言下では、売り上げは例年の1割以下。3日連続で夜の客がゼロだったこともあった。「またそんなことが起きるかと思うと、不安で仕方がない。店を続けるべきか、本気で悩んでいる」と打ち明ける。

 宣言発令に際して西村氏は酒類提供を続ける飲食店に対し、取引先の金融機関からも酒類提供停止要請の順守を呼びかけるよう求めた。翌日に撤回されたものの、平山さんは「目先の資金繰りに躍起になっている店が多いのに、大臣の発言はその弱みにつけこんだ権力の乱用だ」と批判。「飲食店のことを全く分かっていない。現場を知る人が政策決定に関わるようにしてもらいたい」と話した。

 酒類提供停止の影響は取引業者にも及ぶ。新宿区の酒卸問屋「佐々木」の佐々木実社長(66)は「わずか3週間で再び酒が出せなくなるとは、夢にも思わなかった」と肩を落とす。

 取引先は都内の飲食店を中心に約3000カ所に上るものの、宣言発令を受け、生ビールのたるの在庫を抱える恐れがあるという。前回の宣言時は300本を製造元に返品し、売り上げは従来の2割に落ち込んだ。「夏は生ビールが売れるのに、また苦境に逆戻りだ。酒類の制限で本当に人出や感染者数は減るのか。酒ばかり標的にされるが、明確な根拠を示してもらわないと納得できない」と憤る。

 西村氏は酒類販売事業者に対し、酒類提供を続ける飲食店との取引を停止するよう求めた。佐々木社長は「酒を出すかどうかは店が判断すること。私たちは商人なので、注文があれば断るわけにはいかない」と反発する。「店との取引は信頼関係で成り立っている。少しでも信頼を損なえば、取引はできなくなる。政府には、店や業者が置かれている現状を分かってもらいたい」と語気を強めた。【木下翔太郎】

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