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宣言下の酒類提供規制 脅しで協力は得られない

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 新型コロナウイルス対策で、政府の要請に応じない飲食店に圧力をかけるようなやり方である。協力を得られるとは思えない。

 4回目の緊急事態宣言が東京都に発令された。8月22日までの期間中、都内の飲食店は酒類の提供停止が求められる。

 問題となったのは、西村康稔経済再生担当相が発表した政府の方針だ。

 飲食店が酒類を提供しないよう取引金融機関に働きかけを求める内容だ。飲食業界の反発を受けて、与党内にも批判が広がり、翌日には撤回に追い込まれた。

 だが、同時に国税庁などが酒類業者に出した依頼は残ったままだ。酒類を提供する飲食店とは、取引しないことを求めている。

 コロナ対策の特別措置法では、要請に応じない店には命令を出し、それでも従わない場合はさらに過料を科すことができる。しかし、取引先からの働きかけや国税庁などからの要請は、法的根拠を欠いている。

 政府が酒類の提供規制にここまでこだわるのは、飲酒を伴う会食は感染リスクが高いとみられるためだ。

 国立感染症研究所は、飲酒を伴う会食に複数回参加した人はそうでない人に比べて、感染リスクが5倍近く高まるという分析結果を公表している。

 東京の宣言は6月21日に解除されたばかりだ。わずか3週間で飲食店は再び酒類を提供できなくなった。大きな打撃だ。

 一方、これまで政府の要請に応じた飲食店への協力金支給は大幅に遅れている。資金繰りに苦しむ飲食店の中には、要請に応じたくても応じられない事業者もあるはずだ。

 民間の調査機関によれば、2020年度に倒産した飲食店は715件に上る。その中で酒場・ビアホールの倒産は00年度以降で最多の183件に達した。

 協力金について政府は酒類の提供を自粛するとの誓約書の提出などを条件に、先渡しで支給する仕組みを導入する方針だ。迅速に対応する必要がある。

 政府はコロナ禍で苦しむ事業者の窮状を直視し、感染防止の必要性を丁寧に説明した上で協力を仰がなければならない。

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