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常夏通信

その102戦没者遺骨の戦後史(48)沖縄で繰り返される?歴史

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政府は沖縄本島南部の土砂を、名護市辺野古で米軍基地新設のための埋め立てに使うことを想定している。南部は沖縄戦の犠牲者の遺骨が埋まったままの可能性が高い。写真が土砂採掘の候補地=沖縄県糸満市で2021年6月21日、栗原俊雄撮影
政府は沖縄本島南部の土砂を、名護市辺野古で米軍基地新設のための埋め立てに使うことを想定している。南部は沖縄戦の犠牲者の遺骨が埋まったままの可能性が高い。写真が土砂採掘の候補地=沖縄県糸満市で2021年6月21日、栗原俊雄撮影

 「歴史は繰り返す」と、よく言われる。しかし、私が見るところ、繰り返さないであろう歴史もある。たとえば第二次世界大戦のような戦争だ。アメリカとイギリス、中国とロシアにフランスなどが核兵器をもっている今日、同大戦のように日本とアメリカ、イギリスやドイツ、ソ連、イタリアとそれぞれの同盟国が国を挙げて陸海空で全面的、かつ同時に戦うような戦争は考えにくい。より現実的なのは局地的な戦闘や、サイバー戦争だろう。

為政者は間違える

 しかし、繰り返す歴史もある。それは「為政者は、庶民が考えることとはまったくレベルが違うミスを犯す。そして、そのつけは庶民に回ってきて、何十年たっても清算されない」ということだ。大学の学部、大学院で日本近現代史を学び、新聞記者になってから一年中「8月ジャーナリズム」=戦争報道をしている「常夏記者」こと私が感じた「常夏史観」である。

 今から80年前の1941年12月、大日本帝国はアメリカやイギリスとの戦争を始めた。37年7月に始まった中国との戦争が泥沼化していた。中国を屈服させることができないまま、米英との戦争を始めた。しかも向こうから攻めてきたのではなく、こちらから攻めていったのだ。

蜃気楼の終戦構想

 当時の政府と軍の最高幹部は、一応の終戦構想を持っていた。それは①同盟国のナチス・ドイツがイギリスを屈服させる②そうするとイギリスの同盟国であるアメリカが戦意を失う③講和するというものだ。本連載で前にも触れたが、私は蜃気楼(しんきろう)のような終戦構想だと思っている。学校の教員だったら、「この構想をみてどう思いますか?」と問うてみたい。

 私が生徒だったら、「ドイツがイギリスを屈服させるとは限りません。もしそうなったとしても、アメリカが戦意を失う保証もない。むしろ『全体主義、ファシズムをやっつけるために頑張るぜ』とエネルギーが増えるかもしれない。『終戦構想』って、まじめに考えたものなの? 本気? どうしてこんな、なんちゃって『構想』が出てきたんですか。そのシステムが知りたい」と質問するだろう。

 勝てるはずのない戦争だった。当時の無能な為政者たちの判断ミスによって、日本人だけでおよそ310万人(厚生労働省の推計)が殺された。国は崩壊した。国の背骨である憲法は、アメリカの強い影響を受けて書き換えられた。米軍基地が日本各地に残った。

 昨今のコロナ禍に対する我らが日本政府の対応を見ていると、「歴史は繰り返す」と改めて感じる。為政者の判断ミスのしわ寄せを受けるのは庶民。しかも参政権のない子どもたちまで巻き込まれる。

 さらにその「常夏史観」を確信したのは、我らが日本政府が、沖縄本島南部の土砂を名護市辺野古で米軍基地の新設の埋め立てに使うことを想定していることを知ったからだ。

政略も戦略も戦術も間違え

 第二次世界大戦末期の45年4月1日。米軍は沖縄本島・読谷村に上陸した。兵力は最大で24万人に上った。迎え撃つ日本軍は陸軍の第32軍(司令官・牛島満中将)が主力で計10万人に満たなかった。第32軍はもともと、3個師団からなっていた。

 しかし45年1月、大本営はそのうちの1師団を台湾に移転させてしまった。米軍は44年夏から、南洋から日本本土に向けて北上を続けていた。サイパンなどのマリアナ諸島を攻略し、フィリピンも奪還した。その後は日本が統治していた台湾に来るかもしれない。当時の軍部はそう予想し、沖縄の戦力を割いたのだ。第32軍は戦力がいきなり3割減ってしまった。

 しかし米軍は台湾を素通りして沖縄に上陸した。もともと戦力不足の第32軍は、さらに大本営の戦略…

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