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日本ではゲームといえばテレビやスマホがメインですが、近年、対面で行う非電源ゲームも注目を集めています。人気のボードゲーム・カードゲームを紹介します。
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ボードゲームに興味を持ち始めた頃、筆者が参考にしたのがまずはブログでした。ルールを詳しく説明したもの▽10段階で評点を付けるレビュー系▽プレーを振り返るもリプレー重視――。ブログによって持ち味は異なりますが、圧倒的な読みやすさとハイテンションなキャラクターの魅力で推したいのが「ある元心理カウンセラーのボードゲーム日記(https://boardgame-replay.com/)」。管理人のあっきぃらびっとさん(以降あきらびさん)にリモートでお話をうかがいました。
元心理カウンセラー
埼玉県出身のあきらびさんは、学校卒業後、行政の心の相談員や教育相談所などに勤務。12年前からは心理職を離れ、介護関係の管理職の傍ら東京都内にスパイスカレー店を開くべく準備作業に追われているとのこと。「プライベートでいろいろあって余裕がなくなり、人の心に関わる責任がもてなくなりました」とあきらびさん。ブログのプロフィルには、「現実がつらくてもボドゲ中は忘れていられる」の言葉。筆者にも刺さる。重くて深いです。
ボードゲームとの出会いは小学生から。ゲームブック(文章の後に示された選択肢にしたがってページをたどるとストーリーの展開と結末が変化する本)▽会話ベースでファンタジー世界での冒険を楽しむTRPG(テーブルトーク・ロールプレーイングゲーム)▽「モンスターメーカー」(鈴木銀一郎作・1988年初版)などのカードゲームと順々にハマっていきます。中学でも先輩自作のボードゲームを遊ぶなど「ゲームだらけの人生」だったそう。
ファーストインパクトは「カルカソンヌ」
日常的にボードゲームを遊ぶようになったのは社会人になってから。友人に薦められた「カルカソンヌ」に衝撃を受けます。「何これ!?面白過ぎる」
オープン会(自由に参加できるボードゲーム会)に出かけたり自分でもゲームを購入したりするようになり、これまでに遊んだ作品は1000種類以上。2004年から始めたブログも、当初のカウンセラーの裏話だったのが4年後にはボードゲーム専門に。週に2度以上の更新を自らに課し、記事は1000本を超え累計アクセスも750万回を突破。あきらびさんは「なんとかボードゲームの面白さを伝えたいと思い続けてきました。決めたことをやりきるのも好きなので」とこともなげだが、文章は軽妙でも真面目な人柄が伝わってきます。
女子大生?キャラ
ブログ「ある元心理カウンセラーのボードゲーム日記」の特長は、なんといってもライブ感。新型コロナウイルス禍でボードゲームを遊ぶ機会が減っているため、作品の内容物を紹介する「開封の儀」回が増えていますが、あきらびさんの真骨頂は遊んだゲームを振り返るリプレー記事。例えば協力型ファンタジー「アンドールの伝説」(ミヒャエル・メンツェル作、2012年初版)では――。
「甲冑(かっちゅう)に身を包んだ怪物スクラルが、私を威嚇してきた。双剣を鋭く振り、龍の尾を大地に何度も打ちつける――その刹那(せつな)、放たれた鋭い矢がスクラルの背中に突き刺さった」
あたかも良質な海外ファンタジー小説を読んでいるかのようです。
かと思えば、カードゲーム「アーティチョークなんて大キライ!」(エマ・ラーキンズ作、20年初版)の回では――。
「相変わらずエンドウ豆作戦なアタシ。ってかピンと来る野菜カードが野菜畑に無かったのよね」
謎の女性キャラです。あきらびさんによると、テンションを高めに記事を書いていたら、読者から「女子大生だと思っていた」との感想が。以後、“女子大生感”を意識して文章を書いているのだとか。画面越しにお会いしたあきらびさんは、女子でも大学生でもない40代のイケメンおじさんでした。現在800本近くあるリプレー記事を1000本にするのが今後の目標といいます。
人生を広げてくれた
あきらびさんにとってボードゲームは「世界観であったり人脈であったり、自分の人生を広げてくれるもの」だといいます。ボードゲームを通じて多数の人とのつながりができただけでなく、積極性や探究心など心の持ちようにも変化が表れたということなのでしょう。得意じゃなかった英語も、日本語訳がなかった作品を自分で和訳をすることで読むのが苦にならなくなりました。
ブログのトップページに表示されている絵は、素材集にあきらびさんが手を入れたもの。「心理学的には、守られている城を出たらウサギ(自分)が右(外界)へ歩いていき、外の世界はたくさんの花(ボードゲーム)が咲いていて、ライオンやペンギンは今まで会ったことのないタイプのこれから出会うお友達」。解説を聞いてなるほどです。
あきらびさんが一番好きなゲームは、TRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をテーマにした「ウォーターディープの支配者たち」。王道のワーカープレースメントでありながら、フレーバーが楽しめ達成感があるところが魅力なのだとか。筆者は未プレーなのでコロナが収束したらぜひ一緒に遊ばせてくださいね。【野地哲郎】=次回は7月31日掲載