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田中優子の江戸から見ると

法政大総長・田中優子さんのコラム。江戸から見る「東京」を、ものや人、風景から語ります。

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水無月

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 いよいよ旧暦では6月、つまり「水無月(みなづき)」である。「無」という文字は誤解を招く。水無月は「水の月」のことで田に水を入れる月、という意味らしい。ただし梅雨時の皐月(さつき)に比べれば雨が少なく暑くなるので、水無月でもおかしくはない。しかし、そもそも月は数字で表しているのだから、名前までつけなくてもよさそうなものだと思うが、月名はひと月あたり、なんと五つの名前がある。水無月は他に風待(かぜまち)月、涼暮(すずくれ)月、蟬羽(せみのは)月、常夏月という別名があるのだ。

 このような別名はすべて季語となっている。つまり江戸時代の俳諧の中で生まれ育てられてきた。和歌は春夏秋冬で編集されるが、短歌はそれに加えて季語も使う。さらに俳諧の季語となると、春夏秋冬がそれぞれ3期に分けられ、夏では初夏、仲夏、晩夏と夏全般にわたる三夏の合計四つの分類になる。水無月は晩夏である。さらにそれぞれの時期の植物や虫、鳥、衣食、農事等々が細かく分類される。

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