函館近海ブリ急増 海水温上昇、12年で34倍に ご当地バーガーも

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新たなご当地グルメとして期待される「函館ブリたれカツバーガー」=北海道函館市で2021年6月12日午前11時7分、真貝恒平撮影 拡大
新たなご当地グルメとして期待される「函館ブリたれカツバーガー」=北海道函館市で2021年6月12日午前11時7分、真貝恒平撮影

 海鮮の街・北海道函館市で、意外な食材を使ったハンバーガーが話題だ。週末には発売直後に完売する人気ぶり。新たなご当地グルメ誕生の裏には地球環境の変化があるといい、北海道の食文化を変えるほどのインパクトが潜んでいるらしい。その食材とは――。【真貝恒平】

 6月の週末。JR五稜郭駅近くの広場にとめられたキッチンカーの前に市民や観光客が列をなしていた。周囲には初夏の爽やかな風に運ばれてタレの香ばしい風味が漂っていた。その名も「函館ブリたれカツバーガー」。近年、函館近海ではブリの漁獲が急増し、これをビジネスチャンスととらえた地元の人々が商品開発に乗り出したのだ。

 大学や企業の関係者でつくる任意団体「はこだて海の教室実行委員会」は、海の豊かな自然を次世代に伝えようと2018年に発足し、ブリの消費拡大を狙ってメニュー開発に挑んだ。昨年、その活動が日本財団(東京都港区)の「海と日本プロジェクト」に選ばれ、開発が本格化した。

タレやソースの変化で3種類の味が楽しめる函館ブリたれカツバーガー=北海道函館市で2021年6月12日午前11時9分、真貝恒平撮影 拡大
タレやソースの変化で3種類の味が楽しめる函館ブリたれカツバーガー=北海道函館市で2021年6月12日午前11時9分、真貝恒平撮影

 市内の若手料理人を中心に新メニューの開発に取り組み、ブリをパン粉で揚げた「函館ブリたれカツ」ができあがった。そして、これを若者にも浸透させるべく、赤カブの千枚漬と一緒に挟んだハンバーガーが完成した。

 今春誕生したこの「ご当地バーガー」は、新型コロナウイルス感染防止の観点からキッチンカーによる土曜日と日曜日の限定販売。函館市など道南地方を中心に移動販売し、開店約2時間で用意した約70食が完売するほどの人気という。

 同市など11市町を含む渡島総合振興局によると、管内でブリの漁獲は08年325トンだったのが、12年後の20年には34倍超の1万1128トンに急増。全国都道府県別の漁獲量で4位に位置する北海道にあって渡島管内は漁獲の6割を占め、ブリの一大産地となっている。

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 一方、かつて主要海産物だったスルメイカは4万8385トンが2218トンに下落。漁獲量はこの2年でブリにとって代わられた。この一つの要因として海水温の上昇があるという。

 道立総合研究機構の海洋環境グループ(余市町)によると、秋にブリが水揚げされる函館市の南茅部(かやべ)沖では年間平均水温が00年の10・9度から11・8度に変化し、この20年で0・9度上昇した。西田芳則研究主幹は「約1度の上昇は海洋環境に大きな変化を及ぼす。暖水を好むブリの資源量が増え、分布域が北上した」と分析する。

 はこだて海の教室実行委員会事務局の国分晋吾さん(38)は「食べてくれた人には海の生態系が変化していることに関心を持ってほしい」と期待を込める。キッチンカー横の看板にはブリの漁獲が急増する要因をクイズ形式で示し、理解を手助けしている。市内のすし店に勤務した経験を持つ国分さんは「水産で発展を遂げてきた街だからこそ、海の変化に敏感になり、これからどう環境を守っていくか、ご当地メニューなどを通じて発信していきたい」と力を込める。

 ただ、新たな食材として期待されるブリだが、課題もある。道内では一般にブリを食べる習慣が根付いているとは言いがたい現状があるのだ。

 総務省家計調査によると、主要都市の年間消費量(18~20年平均)は全国平均の1630グラムに対し、道内トップの札幌市でさえ937グラムにとどまる。「ひみ寒ブリ」の水揚げで知られる富山市(4109グラム)と比べると差は歴然としている。

渡島総合振興局などが開発したブリの缶詰=北海道函館市で2021年6月11日午後5時50分、真貝恒平撮影 拡大
渡島総合振興局などが開発したブリの缶詰=北海道函館市で2021年6月11日午後5時50分、真貝恒平撮影

 しかし、渡島総合振興局はブリの食習慣を根付かせようと、函館水産高(北斗市)などと昨年「ブリ缶詰」を共同開発するなど食品開発を進めており、今後も新商品を考案する計画だ。水産課の石毛友里絵主事は「ブリがこのまま漁獲を伸ばして北海道を代表する魚になるかは未知数だが、食習慣を浸透させ、道内の水産業を支える食材の一つとして確立したい」と意気込む。

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