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コロナ再拡大招いた「経験の逆機能」 大阪の危機管理の課題とは

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福田充教授=本人提供 拡大
福田充教授=本人提供

 新型コロナウイルスの感染が急拡大した3月以降の第4波で、大阪府内では重症者数が重症病床を上回るなど、深刻な被害が出た。昨春以降の府の対策は危機管理の観点で正しかったのか。日本大危機管理学部の福田充教授(リスクコミュニケーション)に聞いた。【聞き手・石川将来】

 ――危機管理の基本は。

 ◆最悪の事態を想定するのが鉄則で、「想定外」による被害は出してはならない。行政からの警告が「空振り」するのは良いが、「見逃し」は許されない。国民の行動変容を促す必要があり、信頼がなによりも大事だ。情報公開を十分にしないといけない。

 ――2020年春の1波で、府は重症者用の病床を最大500床確保する計画を立てていたが、懸念された爆発的感染は起きず、夏には病床確保計画を縮小した。

 ◆こうした現象を「経験の逆機能」という。過去に起きた小さな被害から、「これ以上の被害は起きない」と解釈し、経験が悪く働いてしまう。災害などの分野で往々にして起こる失敗例だ。1波の時のような警戒心は過剰だったと捉えられ、忘れられていく。だが、2波、3波の方がより大きな被害をもたらす可能性はある。被害想定を過小評価すべきではない。

 ――4波では医療が崩壊状態に陥った。

 ◆一時、入院率は10%程度にまで落ちた。約90%の患者が自宅などで療養生活を送らざるを得ず、病床さえ空いていれば救えたかもしれない命が失われる事例もあった。その点で私は、大阪では医療崩壊が起きたと考える。医療崩壊の現実を正しく伝えなければ、府民とのリスクコミュニケーションは不十分だ。

 ――大阪市にまん延防止等重点措置が適用された際や、3度目の緊急事態宣言が発令された際に府は将来の感染予測を示したが、いずれも対策の効果が出て感染者は減少に転じるとする内容だった。

 ◆感染症対策で重要なのは府民への説得コミュニケーションだ。「外出を自粛すれば感染者が減る」など効果が出ることを見通したプランAと合わせ、「時短要請などの効果がなければ感染拡大は収まらない」などという厳しい見立てを盛り込んだプランBも示す方が効果があるとされる。前者は「報酬説得」、後者は「恐怖説得」と言い、アメとムチの関係だ。その意味では府の試算は一面的で、リスクコミュニケーションの戦略が不十分だった。

 ――府は5月、治療を受けずに病院以外で亡くなった患者数を初公表したが、1度でも自宅でオンライン診療を受けた場合などは「医療を受けた」として対象から外した。

 ◆入院できずに亡くなった人の実態を正しく反映していないのではないか。行政の責任を極力少なくしたいという心理が働き、対象を狭めていると感じる。後ろ向きな情報公開で、行政の信頼を失うことにもなりかねない。定義の範囲はどうあるべきか、府庁内で十分な議論が必要だ。

 ――感染拡大の5波が起きる懸念もある。

 ◆新たな変異株は常に誕生するため、4波以上に大きな波が襲うことも考慮すべきだ。ワクチンによる対策ばかりに依存するのは非常に危険だ。接種後の効果がどれだけ持続するかも不明で、絶えずワクチンを打ち続けなければいけないことも考えられる。最悪の事態を想定するという危機管理の鉄則を忘れないことが重要だ。

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