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急逝した恩師の悲願達成へ 桃山学院大アメフト部の固い決意

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グラウンドで練習する桃山学院大アメフト部の選手たち=大阪府和泉市で2021年6月29日午後5時59分、望月亮一撮影
グラウンドで練習する桃山学院大アメフト部の選手たち=大阪府和泉市で2021年6月29日午後5時59分、望月亮一撮影

 土煙が舞うグラウンドで、部員たちは汗をにじませながら体をぶつけ合っていた。アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部に所属する桃山学院大は、激動のさなかにある。同大を2014年に37季ぶりに1部に導いた田辺光広監督が今年1月、64歳で急逝し、新体制になった。近年、エレベーターのように昇降格を繰り返すチームの目標は1部残留。前監督の悲願でもある。

 新型コロナウイルスの影響で昨秋、関西学生リーグ1部は総当たりのリーグ戦ではなく8校によるトーナメント方式を採用する異例のシーズンになった。3季ぶりに1部に復帰した桃山学院大は1回戦で立命大に敗れ、順位決定予備戦では京大に屈した。11月29日、シーズン最終戦となった近大戦には勝ったが、その直前に田辺前監督は入院した。

 末期の膵臓(すいぞう)がんだった。医者から余命宣告をされるほど病状は進んでいたが、長年コンビを組んでいた加藤佑一ヘッドコーチ(HC)=42=にさえ「血栓が見つかったから検査で入院する。命に別条はない」と伝えるなど、アメフト部の関係者には詳細を知らせなかった。約2カ月後の1月25日に死去。当時、同部OB会の副会長で、後任を託されることになる藤原健大監督(51)は突然の訃報に「目の前が真っ暗になった」。藤原監督自身も2019年9月に食道と胃の境目付近のがんで手術を受けていただけに「もっと早く検査して病気が見つかっていれば……」。病状を語らなかった田辺前監督を「アメフト部を誰よりも愛し、支え続けていた。部に心配や迷惑を掛けたくないと思ったのでしょう」と推し量る。

前監督の下支え

 「サンダーリング・リージョン・ライオンズ(雷軍団の勇者)」の愛称を持つ桃山学院大アメフト部は1967年に創部され、70~78年は関西1部で戦った。その後は長年低迷したが、07年からディフェンスコーチを務めていた加藤さんがHCに昇格して現場の指揮を任され、監督に田辺さんが就いた09年から浮上の兆しを見せる。…

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