西武・岸潤一郎/2 「あんた何歳なん?」から始まった妻の支援
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プロ野球の厳しい世界で活躍を目指す若手が今、何を考えているのか。担当記者が一人の選手を追いかける「プロ野球・密着中」。前回、「呪縛」の苦しみを語った西武・岸潤一郎外野手(24)は今、1軍定着に向け必死だ。その裏には愛すべき家族の存在がある。プロ入り前から支えてくれている妻への思いを動画と記事で紹介する。(記事の最後にインタビュー動画があります。次回の公開は8月下旬の予定です)
嵐のように過ぎ去った1カ月半だった。5月末に1軍昇格した後、結果を出し続け、2軍に降格することなく前半戦を終えた。
試合前練習中の岸を見ていると、とにかくコーチ陣によく話しかけている。「試合に出る以上、不安は一つでもなくしておきたい。(コーチに)しつこいと思われるかもしれないですけど、引いて、それでミスにつながるよりはマシという感じで捉えています」。その姿勢が一つのプレーにつながった。
6月11日の中日戦(メットライフ)。1点を追う九回2死一塁、一塁走者の岸は、代打・中村の右翼への打球で全速力で二塁を蹴り、三塁へ。深めに守っていた右翼手の手前に打球が落ち、相手の中継プレーも少し乱れ、三塁ランナーコーチの黒田コーチは本塁突入を指示。岸も一気に三塁を回った。結果は惜しくも本塁でタッチアウト。同点とはならずゲームセットになった。
「積極的な走塁」か「暴走」か。特に次打者が森ということもあり、ファンの中でも意見が分かれた。だが、当の本人は「あれがベスト」と言い切る。
伏線があった。この試合の前日の練習中、岸は黒田コーチに走塁について相談していた。「基本的に『自分は回る気で行くのでお願いします』という感じで伝えた」という。意思疎通を図っていたのだ。右前打で一塁から一気に本塁を狙える脚力と積極的な姿勢。「結果が全て」と言われがちなプロの世界だが、結果に表れないこともある。
1カ月半で1軍に定着したと言えなくもないが、岸は「不安しかない」という。「悪かったらいつでも交代させられる。すごく良い選手がファームにはいっぱいいる。何としても結果を残してチームに貢献したいなという気持ち」。その必死な姿勢の背景には2人の娘と、プロ入り前から支えてくれた妻の存在がある。
妻と出会ったのは野球をやめていた時期だった。拓大では相次ぐけがに悩まされたこともあり、3年秋に退学。野球をやめる決心をし、地元の兵庫に戻った。そこで後に妻となる女性と会った。年上のしっかり者だったが、岸のことも野球のルールも知らなかったという。
「僕のことを一切知らなかったし、今でも僕がどこを守っているかあんまり分かっていないんじゃないですか?」と笑う。高知・明徳義塾高時代に雑誌の表紙を飾るなど全国的な知名度を誇った岸にとっては新鮮だった。付き合いは、岸が独立リーグの四国アイランドリーグplus徳島で再起した後も続いた。彼女は関西から夜行バスで徳島に通い、岸を支えた。
“事件”が起き…
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