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バイデン政権2021

第46代米大統領となったバイデン氏。分断された国内や不安定化する国際情勢にどう対応するのでしょうか。

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発足半年のバイデン政権 募るジレンマ 立ちはだかる海賊とは何か

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ドイツのメルケル首相との共同記者会見では笑顔も見せたバイデン米大統領=ホワイトハウスで2021年7月15日、AP
ドイツのメルケル首相との共同記者会見では笑顔も見せたバイデン米大統領=ホワイトハウスで2021年7月15日、AP

 バイデン米政権は20日、発足から半年を迎えた。新型コロナウイルスのワクチン接種や対中国を意識した戦略的な外交を進めてきたが、内政面では議会で思うように法案を通せないでいる。青をシンボルカラーとする民主党は、大統領と上下両院の多数派を占める「トリプルブルー」のはずなのに、政権運営に苦労するのはなぜなのか。

 7月17日、バイデン氏は二つの声明を出した。投票機会の保障を訴える声明と、幼少期に親と共に不法入国した若者の強制送還に反対する声明だったが、共通する文言が書かれていた。「議会に(関連する)法案を可決するよう求める」。裏を返せば、議会での法案審議が政権の思惑通りには進んでいないことを表している。

 5月には、新型コロナ禍の中で増加したアジア系住民への憎悪犯罪(ヘイトクライム)の対策を強化する法律を超党派で成立させた。だが投票機会を拡大する法案や、1月の連邦議会乱入事件を検証する独立調査委員会の設置法案は上院で共和党が反対し、実質的な審議に入れなかった。「早く私のデスクに(署名するための)法案を持ってきてほしい」がバイデン氏の口癖になっている。

 なぜ、少数派のはずの共和党が法案審議の「壁」になるのか。その答えは、上院の伝統にある。人口比などに応じ定期的に州の議席配分が変わる下院と異なり、上院は建国当初から、各州から2人の議員が集まっている。連邦を構成する各州の意見を国政に反映させる役割があり、上院規則19条は「いかなる議員も他の議員の討論中、その議員の同意なしに中断させることができない」と定める。下院にはこのような規則はなく、徹底討論や少数派の意見を尊重する上院ならではの規則だ。

一人の議員が妨害できる伝統

 討論を尽くす「古き良き伝統」と言えば聞こえはいいが、法案に反対する議員が一人でもいれば、延々と討論を続けて議事を妨害できる「裏技」が使える。この裏技は「フィリバスター」(オランダ語の「海賊」が語源)と呼ばれ、1908年には徹夜で計18時間23分も討論し続けた議員もいた。

 第一次大戦中に「フィリバスターで国政を停滞させてはいけない」との声が高まり、17年に討論を打ち切れる制度が導入された。打ち切りの動議が可決されれば、討論時間は30時間以内に制限され、延々と話し続けるフィリバスターは使えなくなる。ただ、可決に必要な票数は過半数ではなく、全議員の5分の3。つまり、定数100の米上院でフィリバスターを許さずに、法案を可決させるには60票が必要なのだ。

 民主党の現有議席は共和党と同じ50で、賛否同数の場合に票を投じるハリス副大統領(上院議長兼務)の決裁票によってかろうじて多数派を維持している。そのため、予算案など過半数で可決できる一部の例外を除いて、民主党だけでは法案を通せない状況になっている。

進む分極化と狭まる妥協の余地

 近年の上院では民主、共和両党の議席が伯仲することが多く、与党が60議席を確保した例は、オバマ政権時代の2009~10年の民主党しかない。一方で、フィリバスターを防ぐために、打ち切り動議は頻繁に出されるようになった。このような動議の提出件数は00年代前半までは1会期(2年間)に数十件だったが、19~20年には過去最多の328件に上った。

 かつて上院では個々の議員が自身の判断に基づき投票する傾向が強かったが、最近では…

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