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「安心安全」って何? 仏紙記者が見た五輪開幕直前の日本

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インタビューに答える仏紙記者の西村カリンさん=東京都千代田区で2021年7月7日、前田梨里子撮影
インタビューに答える仏紙記者の西村カリンさん=東京都千代田区で2021年7月7日、前田梨里子撮影

 新型コロナウイルス感染拡大による史上初の延期を経て、23日に開幕する東京オリンピック。だが足元では感染がおさまらず、開催都市の東京には4回目の緊急事態宣言が発令されている。祭典を迎える高揚感にはほど遠く、大会への賛否も真っ二つに割れたままだ。この状況を、海外メディアの記者はどう見ているのだろうか。「日本は本来、準備と管理が得意で完璧にやる国のはず。でも今回に関して言えば…」。フランスの日刊紙「リベラシオン」とラジオ局「ラジオ・フランス」で特派員を務める西村カリンさん(51)に話を聞いた。【金志尚/デジタル報道センター】

段取り上手な日本はどこへ

 ウガンダの重量挙げ選手が、大阪府内の宿泊先を無断で抜け出して所在不明(後に発見)。サッカーの南アフリカ代表チームの選手らが新型コロナ陽性……。開幕直前になっても、コロナ対策への不安をかきたてるニュースが目立つ。選手やスタッフ、メディアが入国する羽田、成田両空港では五輪関係者を外部の人と接触させない「バブル方式」が取られることになっているが、両空港ともほころびが報じられている。

 「私も羽田空港でコロナ対策を取材しましたが、がっかりしました。ルールをちゃんと決定して徹底すれば、それほど問題ないかもしれないと思っていました。むしろ日本らしい完璧なやり方を(フランスの人たちに)見せようと思って取材に行ったんですね。それが全く逆で、信じられないという気持ちでした」

 流ちょうな日本語でそう語る西村さんは、かれこれ日本在住約20年になるジャーナリストだ。もともと旅行で訪れたことをきっかけに日本を気に入り、仕事と生活の拠点をパリから移した。2004年から19年までフランスの大手通信社AFPの東京特派員を務め、昨年からリベラシオン紙とラジオ・フランスの記者として日本のニュースを追いかけている。プライベートでは12年に漫画家のじゃんぽ~る西さんと結婚。日仏にルーツを持つ8歳と3歳の2人の子どもを育てている。

 一人の生活者として、「日本は本当に住みやすい国」と西村さんは話す。何ごともシステマチックで、先々を見据えた段取りの徹底。その根底にある勤勉で真面目な国民性……。こうした良さを日々肌で感じているだけに、ことオリンピックを巡る対応には首をかしげることが多いという。それは何も、空港の件に限ったことではない。

日本の夏の気温は「穏やか」?

 最初に違和感を覚えたのは、日本の五輪招致委員会が13年に国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補申請書を見たときだ。そこには、大会期間の7月末から8月初めの気温についてフランス語で「穏やか」を意味する「douces」の文字が記されていた。「『あれっ?』と思いました。だって日本の夏は普通、とても暑いですから。しかもフランスとかと違って湿度が高い。フランス語で表現するなら『torrides』(焼けるような)がふさわしかったと思います」。果たして梅雨が明けた7月下旬の東京は、じっとしているだけで汗が噴き出す、うだるような暑さである。

 実態との隔たりという意味では、大会の大義に掲げられてきた「復興五輪」も同じだろうと西村さんは感じている。東日本大震災からの復興がいまだ途上であることは、内情を少しでも知る者なら自明の理だ。だからこそ3月下旬に福島県双葉町であった聖火リレーを取材したときは心底ガッカリした。ランナーたちが走ったのは、復興事業で整備されたJR双葉駅前の広場を回るルート。少し離れたところには震災の痕跡があちこちに残っているのに、それらの前を通ることはなかった。

 「双葉町には(東京電力福島第1原発事故による全町避難で)今も誰も住んでいません。なのにきれいになった場所だけを見せるというのは、隠蔽(いんぺい)と同じです。本当は(まだ復興していない)裏側を見せないといけなかったと思います。復興五輪といっても、『実はここはまだなので、これから頑張ります』とか『これからこうい…

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