特集

カルチャープラス

カルチャー各分野をどっぷり取材している学芸部の担当記者が、とっておきの話を報告します。インタビューの詳報、記者会見の裏話、作品やイベントの論評など、さまざまな手法で、カルチャー分野の話題の現象を記者の視点でお伝えします。

特集一覧

村上春樹をめぐるメモらんだむ

「ハルキ的比喩」全開のクラシック談義

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した濱口竜介監督(左)=仏カンヌで17日(ゲッティ共同)
第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した濱口竜介監督(左)=仏カンヌで17日(ゲッティ共同)

「ドライブ・マイ・カー」カンヌ脚本賞

 前回紹介した村上春樹さん原作の映画「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)が17日(日本時間18日)、第74回カンヌ国際映画祭で見事に脚本賞を受賞した。濱口監督と大江崇允(たかまさ)さんによる共同脚本。現地で行われた授賞式後の記者会見で濱口監督は「村上さんの原作と、劇中劇の『ワーニャ伯父さん』(チェーホフ作)を読み、インプットされたものを流し込むように書いた」と語ったそうだ。確かに、原作の同題短編小説に加えて、他の村上作品や「ワーニャ伯父さん」などからさまざまなモチーフを取り込んだ構成の妙が光る映画だけに、脚本賞は納得の評価という気がする。

ジャケットも含めた「たたずまい」重視

 さて、今回は6月に刊行された村上さんの新しいエッセー集「古くて素敵なクラシック・レコードたち」(文芸春秋)を取り上げたい。ドーナツ盤より一回り小さい、正方形に近い判型もおしゃれで……などといっても、今やドーナツ盤(直径17・5センチ、1分間45回転のレコードを指す)を知らない人のほうが多いかもしれない。村上さんはジャズを中心とする約1万5000枚ものレコードコレクションの所有者だが、クラシックも相当なもので、持っているレコードの内訳は「ジャズが七割、クラシックが二割、ロック・ポピュラーが一割」(前書き「なぜアナログ・レコードなのか?」)。クラシックだけで約3000枚に上る。

 本書の帯には「うちの棚から、好きなレコード、面白いレコードを486枚ほど選んでみました」「美しいジャケットをオールカラーで紹介」とある。前書きで村上さんは、ジャズに関してはコレクター的なこだわりがあるが、クラシックの場合は「ジャケットも含めた『たたずまい』」を重視していると述べている。実際、多様なデザイン、色づかいのジャケットの画像が並び、それ自体が時代の変遷や、発売元などのお国柄やセンスの違いを示していて、眺めるだけで楽しい。

 ただし、物はクラシック音楽である。これは人によって大きく関心の持ちようが異なるジャンルだろう。かなり趣味の深い読者、あるいは…

この記事は有料記事です。

残り3603文字(全文4484文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者
すべて見る

注目の特集