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バイデン政権2021

第46代米大統領となったバイデン氏。分断された国内や不安定化する国際情勢にどう対応するのでしょうか。

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独露パイプライン完成、米が容認声明発表 米欧関係立て直し優先

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独露パイプラインの問題などを協議するバイデン米大統領(右)とメルケル独首相=米ホワイトハウスで2021年7月15日、AP 拡大
独露パイプラインの問題などを協議するバイデン米大統領(右)とメルケル独首相=米ホワイトハウスで2021年7月15日、AP

 米独両政府は21日、ロシアからドイツに天然ガスを運ぶ海底パイプライン「ノルド・ストリーム2(NS2)」を巡り、米政府が完成を事実上容認する内容の共同声明を発表した。歴代米政権は安全保障上の懸念からNS2に強く反対してきたが、バイデン政権はパイプラインが完成間近のため制裁措置で状況を変えるのは困難と判断し、トランプ前政権で傷ついた米欧関係の立て直しを優先した。

 独露を直接結ぶNS2の完成で、欧州には安定したガスの供給が見込まれる。一方で、ロシアのガス輸出の経由地となってきたウクライナなどにとってはガス通過料の収入減やロシアによるガス供給を用いた影響力の行使などが懸念されている。

 共同声明では、ロシアがエネルギー供給を「武器」として使った場合「ドイツは国家レベルで対応し、欧州連合(EU)内で制裁も含めたロシアへのエネルギー輸出制限措置を求める」などと明記した。ドイツは、ウクライナの再生可能エネルギーへの転換を支援する基金を設立し、米独で少なくとも10億ドル(約1100億円)を拠出する。ロシアとウクライナのガス輸送に関する協定延長も米独で支援する。

 歴代米政権はNS2の完成によって「欧州のロシアへのエネルギー依存を高める」と一貫して批判してきた。米政府高官は「米国がNS2に反対であることに変わりはないが、制裁は重要な欧州との同盟関係が損なわれるリスクがある」と事実上の容認に踏み切った理由を明かした。

 また、サキ大統領報道官は21日、ウクライナのゼレンスキー大統領が8月30日にホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と会談すると発表した。米独の共同声明を踏まえ、エネルギーの安全保障などについて協議するとみられる。

 ドイツのマース外相は「大西洋を横断するパートナーとして、我々(独米)はウクライナの側にしっかりと立っている」と強調した。

 一方、米独の共同声明を受け、ウクライナは反発している。ウクライナのクレバ外相は21日、同様にロシアからのガスが経由するポーランドのラウ外相と共同声明を出し、「(NS2が)ウクライナと中欧に脅威を作り出し、欧州の安全保障を不安定化させるロシアの潜在力を増大させる」と改めて批判した。また米独の支援の提案についても「脅威を効果的に抑えるには十分と言えない」と指摘。関係国との協議を続ける意向を示した。ウクライナ大統領府によると、ゼレンスキー氏はバイデン氏との会談で「安全保障上の脅威」としてNS2の問題を取り上げるという。

 露大統領府によると、プーチン大統領は21日、メルケル独首相と電話協議を行い、米独の協議の説明を受けた。両首脳はNS2の完成が近づいていることに満足の意を表明するとともに、ウクライナを通過するガス供給の契約延長の可能性についても協議したという。ただ、米独の共同声明が2014年にロシアが軍事介入したウクライナ危機を念頭に、「ウクライナや他の地域におけるロシアの侵略と破壊的な活動に反対を表明する」と明記したことに露側は反発している。アントノフ駐米大使はフェイスブックに「受け入れられない」と投稿。NS2が「商業的な契約」であることを強調した。【ワシントン鈴木一生、モスクワ前谷宏、ベルリン念佛明奈】

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