ひきこもり支援室から16人就職 「社会の問題」神戸市開設1年

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相談を呼び掛ける松原雅子室長=神戸市中央区の神戸ひきこもり支援室で2021年7月6日午後5時7分、宮本翔平撮影 拡大
相談を呼び掛ける松原雅子室長=神戸市中央区の神戸ひきこもり支援室で2021年7月6日午後5時7分、宮本翔平撮影

 引きこもりの人や家族の相談窓口「神戸ひきこもり支援室」の開設から1年となり、神戸市が対応状況をまとめた。約1年間の相談件数は延べ2516件でこれまでに就労支援などを通じて16人が就職した。支援室は「引きこもりは個人や家族の責任でなく、社会の問題だ。気軽に相談してもらい、抱えている悩みなどを解決できるよう支えていきたい」と話している。

 内閣府の調査から、神戸市内では15~64歳で約6600人が引きこもっていると推計される。市は2009年に相談事業を始め、20年2月に「支援室」を開設して体制を強化した。分室を合わせて精神保健福祉士、社会福祉士、公認心理師ら計7人の相談員が当事者や家族の悩みに対応する。3月末までに寄せられた2516件の相談の内訳は電話1117件、来所1262件、訪問76件、メール61件だった。

 対応した引きこもりの人は595人で20~40代が中心。ほとんどが家族と同居しており、引きこもりの期間は10年以上が最も多かった。10代後半~20代前半に学校や職場の人間関係を理由に引きこもりが始まる傾向がある。半数は就労経験があり、4割程度に精神疾患があった。未受診の人がおり、疾患のある人はもっと多いとみられる。

 市は4月時点で支援を継続している193人に聞き取り調査をした。初回の相談は92%が家族で当事者は8%にとどまったが、支援を継続することで、当事者の相談が22%に増加した。また、相談を重ねると、初回相談時から5ポイント増の61%が家族との会話があるとなった。暴力などの問題行動は全体の13%にあたる26人で、うち6人は改善したという。

 当事者からの相談内容は複数回答で、社会復帰したい、働きたい40%▽自立したい、引きこもりから抜け出したい16%▽精神的症状12%▽障害者が働ける場所を教えてほしい4%▽自由に使えるお金がない2%――の順で多かった。家族からは、当事者にどう働きかければよいか32%▽今後の不安、家族亡き後の不安25%▽働いてほしい、働く意欲を持ってほしい22%▽人と交流してほしい4%▽治療を受けてほしい3%――の順だった。

 引きこもりの当事者、家族ともに就労を望む相談は多い。職員がハローワークに付き添うなど、就職活動を支援し、これまでに計16人が就職した。うち4人は、生活習慣の改善▽ストレスマネジメント▽就労体験――などを行う支援室の就労支援事業を利用した。引きこもり期間が長いなど、就労までに段階が必要な人に向けた制度で9人が利用している。【宮本翔平】

20年就労できず、今は「仕事楽しい」

 神戸市西区の40代女性は20年6月、支援室の相談会に参加した。短大卒業後に勤めた医療事務の仕事は1年満たずに派遣切りとなり、次の職場も間もなく解雇された。元々、人と話すのが苦手で働く自信を失った。再び自分を否定されるのが怖く、職探しは続かなかった。約20年間、家事や父親の仕事を手伝い、買い物で外出することはあるが、仕事には就けなかった。家族や親戚以外と話す機会もほとんどなかった。

 電車広告で支援室の活動を知った母親に目的を告げられずに連れ出された。だまされるように始まった相談だったが、両親の死後を考えて不安になったこともある。

 「この機会を逃したら、もうええわとなってしまう」と覚悟した。相談を重ね、就労支援事業で自分に向いている仕事を見つめ直した。2020年12月から紹介された工場で働き、はさみの組み立て作業などを行う。現在は週4日、1日3時間の勤務で「ものづくりは大好きで仕事は本当に楽しい。できる限り働き続けたい」と意欲を語る。

 女性は「トントン拍子で仕事が決まり、働けていることに驚いている。1年前は今の自分の姿を想像できなかった。相談していなければ変わらずに家で生活していたと思う」と笑顔をみせる。そして「私のように、きっかけさえあれば仕事ができる人は多いと思う」と話した。

 支援室の松原雅子室長は「相談者数は推計される引きこもりの人に遠く及ばない。働きたいと考えている人は多い。そのきっかけや就労に向けた準備の支援をしたい。まずは気軽に相談してほしい」と利用を呼び掛けている。相談は平日午前9時~午後5時、短縮ダイヤル「#8900」。電話(078・361・3521)やメール(hikikomori_shien@office.city.kobe.lg.jp)や、来所の相談も受け付けている。【宮本翔平】

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