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五輪開会式目前に「炎上」 過去の不祥事、SNSで急速に拡散

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国立競技場=東京都渋谷区で、北山夏帆撮影 拡大
国立競技場=東京都渋谷区で、北山夏帆撮影

 楽曲担当の小山田圭吾さん、ショーディレクターの小林賢太郎さん……、23日の東京オリンピック開会式を目前にして、重要な役目を担う2人の辞任、解任が相次いだ。いずれも過去の言動がSNS(ネット交流サービス)で急速に拡散し、「炎上」状態となったことで表面化した。こうした状況の背景に何があるのか。【山下智恵、塩田彩/デジタル報道センター】

 「ああ、あの『ユダヤ人大量惨殺ごっこ』やろうって言った時のな」

 小林さんがコンビを組んでいたお笑いユニット「ラーメンズ」のコントの一場面だ。小林さんは、人の形に切った紙がたくさんある様子を表現する際、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をやゆする言葉を使った。

小林賢太郎氏 拡大
小林賢太郎氏

 この動画は21日夜から拡散したとみられる。22日に記者会見した大会組織委員会によると、このコントは1998年に販売されたビデオに収録されていた。

 第二次世界大戦での悲惨な虐殺への反省から、とくに欧米ではナチスやホロコーストをやゆすることはタブー視される。まして、東京五輪が掲げる「多様性と調和」というコンセプトともかけ離れる。20年以上前の作品とはいえ、この直後から、インターネット上で厳しい批判の声が急速に広がった。

 前東京都知事の舛添要一さんはツイッターで「人類の最悪の犯罪を笑いの対象にしてはならない。それにしても組織委の情報収集能力の欠如と歴史の無知に愕然(がくぜん)。。」と投稿。東国原英夫・前宮崎県知事は「しかし、随分前の事とは言え、ホロコーストのパロディは国際的に不味(まず)いだろう」とツイートした。

 政治学者の山口二郎さんもツイッターで「日本の芸能人に、人間の尊厳を守るとか、生命の冒瀆(ぼうとく)を許さないという基本的価値が共有されていないということだろう」と批判した。「尾木ママ」こと教育評論家の尾木直樹さんは自身のブログで「信じられないです」と述べ、「根本的背景には、戦争責任をしっかり問うてこなかったこと、戦犯が平気で日本の政治を支配してきた杜撰(ずさん)さの矛盾が噴き出しているのではないでしょうか?」と指摘した。

 東京五輪の開閉会式を巡っては、楽曲を担当する小山田圭吾さんも、1995~96年に掲載された同級生へのいじめを巡る雑誌記事がSNSで急速に拡散し炎上。19日に辞任したばかりだ。白河桃子・相模女子大特任教授はツイッターで、「本質は『日本の人権意識』が全くグローバルと合わなくなってきている事実です。女性、いじめ、障害者、そしてホロコースト、全ては『人権』が根本にある問題です」と指摘した。近現代史家の辻田真佐憲(まさのり)さんもツイッターで「もともと利権のためのイベントなのに、多様性だのなんだの綺麗事(きれいごと)でコーティングするから、少しでも綻(ほころ)びがあると、内部の汚い部分がすぐ出てきてしまう。ここまで空気が悪くなるともうそれが止められない」と述べた。

不祥事「発掘」、背景に五輪への不満

 過去の不祥事がインターネット上で「発掘」され、SNSで拡散する背景には何があるのか。

武藤敏郎事務総長=代表撮影 拡大
武藤敏郎事務総長=代表撮影

 ネット世論に詳しい東京工業大の西田亮介准教授は毎日新聞の取材に「五輪への関心が否定的に向いている。新型コロナ禍でのストレス、五輪開催への不満、不信がたまった結果、関係者への過去の言動に対しても大きく拡散する結果となった」と述べる。

 西田さんは「ホロコーストは国際的に決して肯定すべきではない話題で議論の余地はなく、小山田氏も五輪の理念に照らせば人選ミス。人選にあたり『身体検査』を十分に行わなかった組織委の責任は重い」とし、2人の辞任、解任は適当だと主張する。その上で「インターネット時代以前の雑誌や舞台の言動が問題になった。ハラスメントや飲酒など、現在と違う基準が事実上の支配的な社会通念だった時代のものが掘り起こされ、制裁を求められる。これはネット社会ならではのこと」と指摘。こうした過去の事例で「制裁」を受けることについては「その是非の判断は難しい」と話す。

 その上で「ここ数年で、公的な言動に対する潔癖化が先鋭化している。『忘れられる権利』は判例や法律として十分に固まっておらず、現状では世間は社会的ペナルティーを重視しており、コロナ禍や五輪への不満やストレスでその傾向は高まっている。しかし、これはあすの我が身でもある。いくらでも掘り出して制裁を求める社会がいいのか、議論が必要かもしれない」と述べた。

【東京オリンピック】

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