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ワクチン接種の証明書 差別生まぬ慎重な議論を

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 新型コロナウイルスのワクチン接種を公的に証明する「ワクチンパスポート」が導入される。所持していれば、一部の海外渡航先で入国後の隔離やPCR検査といった防疫措置が減免される。

 ビジネスや観光での国境をまたぐ往来を後押しし、景気を下支えする狙いがある。欧州連合(EU)など主要国・地域で導入が進んでいる。

 政府は今のところ、海外渡航に使途を限る方針だ。一方で経済界は、国内で開くイベントの優先入場や、医療・介護施設での面会制限の緩和など、幅広く活用するよう求めている。

 リスクが低い人から行動制限を緩めていけば、経済の回復を早められると考えるからだ。

 ただし、ワクチンが国民に行き渡るにはまだ時間がかかる。副反応への懸念から二の足を踏む人もいる。接種の強制や、未接種者への差別につながらないよう、慎重な議論が不可欠だ。

 既に一部の自治体や企業は、接種後に発行される証明書を提示した人に対し、地域の買い物に使える割引券を配布するといった特典を設けている。

 こうした取り組みを行う場合、利用者の納得を得られる内容か、公平性や公正さを著しく欠いていないか、丁寧に検討する必要がある。例えば、接種を採用の条件にするような行為は避けなければならない。

 接種歴は個人の医療情報に当たる。プライバシーを侵害することがないよう、適切な取り扱いが欠かせない。

 ワクチンには、発症や重症化を抑止する効果が認められる。一方で、感染防止策としては万全といえない。こうした点を国民に正しく理解してもらう取り組みを強化する必要がある。

 接種証明を経済回復の手立てと位置づけるのであれば、不適切な利用や差別を生まないためのルール作りが急務となる。政府は、専門家の意見を十分に踏まえて対応すべきだ。

 ワクチンは感染に関わるリスクを低減し、人々が安心して生活を営む一助となる。接種証明の活用が新たな摩擦を生み出すことにならぬよう、きめ細かな配慮が求められる。

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