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開会式演出者の解任 五輪の理念踏みにじった

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 平和を希求し、あらゆる差別を禁じる五輪憲章の理念を踏みにじるものだ。東京オリンピックの大会ビジョンにも反する。

 開会式の演出を担当する小林賢太郎氏が、お笑い芸人だった頃にナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をコントのネタにしていた。

 小林氏は演出全体の調整役を務めていたという。今回の問題が発覚して本人は謝罪したが、大会組織委員会が解任した。

 開会式をめぐっては、楽曲担当の小山田圭吾氏が過去に障害者の同級生らをいじめていたことが分かり、辞任したばかりだ。

 小林氏はお笑いコンビ「ラーメンズ」時代の1998年に発売されたビデオの中で、「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」という表現を使っていた。

 米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は「ナチスの虐殺の犠牲者をあざける権利は誰にもない。この人物が東京五輪に関わることは600万人のユダヤ人の記憶を侮辱している」との声明を発表した。

 開会式は、開催国の文化や伝統を世界に発信する重要な場である。その演出を担うに足る人物かどうか十分に調べないまま、任命した組織委の責任は極めて重い。

 開幕直前に外部から指摘を受け、組織委は慌てて対応した。世界に注目される国家イベントの運営に関わる団体として失格だ。

 小山田氏が辞任した際、組織委の武藤敏郎事務総長は「一人一人を我々が選んだわけではない。誘い合ってできたグループを選んだ」と明かした。人選のプロセスがずさんだった。

 五輪憲章は根本原則の中で、人種や肌の色、宗教などによるいかなる差別も認めていない。今大会も「多様性と調和」を掲げる。

 2月には森喜朗・組織委会長が女性蔑視問題で、3月には開閉会式の責任者である佐々木宏氏が人気タレントの容姿を侮辱するようなプランを提案したとして、それぞれ辞任した。

 相次ぐ不祥事で、開幕前から東京五輪の価値は損なわれた。世界中の視聴者は今夜の開会式をどんな思いで見るだろうか。組織委はこのような事態を招いた経緯を明らかにしなければならない。

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