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憤り、無関心、諦め……開会式その日を複雑な思いで迎えた人たち

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「夜のパン屋さん」を手がける料理研究家の枝元なほみさん=東京都新宿区で2021年7月23日、塩田彩撮影
「夜のパン屋さん」を手がける料理研究家の枝元なほみさん=東京都新宿区で2021年7月23日、塩田彩撮影

 直前まですったもんだが続いた東京オリンピックが23日、ようやく開幕した。新型コロナウイルスの感染拡大は収まるどころか悪化の一途をたどり、史上初めて延期された「スポーツの祭典」のゴールを阻む恐れもある。首都で57年ぶりに聖火がともった日を、複雑な思いで迎えた人たちを追った。【木許はるみ、塩田彩、大野友嘉子、菅野蘭/デジタル報道センター】

困窮の大学生たち「関係ない」

 午後4時20分、東京・八王子にある東京都立大の南大沢キャンパスは日中の蒸し暑さが少し和らぎだしていた。そしていつものように、学生向けの食料配布が始まった。2時間ほどで訪れたのは27人。新型コロナの影響でアルバイトが減り、生活費を稼ぐことができなくなった学生たちだ。

 有志が2020年5月に始め、現在は毎週木~土曜日に実施されているこの取り組みには、約100人が集まるようになった。

 「これだけ国民に我慢させているのに、五輪はやるんだなと。何かの利権とか、裏があるのか疑ってしまいますね」。法学部3年の男子学生(26)は、マイバッグにパンなどを詰め終えてため息をついた。食料配布を利用したのは4回目になる。授業がリモートに切り替わった昨年、カフェのアルバイトを辞めて九州の実家に帰省した。「コロナがいつ収束するか分からなくて……」。それでも下宿先を引き払うわけにはいかず、家賃は支払い続けなければならなかった。

 3年生に進み、対面授業に戻ったのを機に再び上京。ウーバーイーツの配達員として働くことにしたが、カフェほどの収入はなく、食料配布に駆け込むようになった。

 五輪が気にならないわけではない。サッカーが好きで、開幕に先んじて始まった女子の試合はテレビで見た。でも純粋に楽しめない。「開会式まで騒動が多かったですからね。いろいろとごちゃごちゃしていて、どうなんだろうと」

 理学部4年生の女子学生(21)は、コロナ禍の前は飲食店などのバイトを2カ所で掛け持ちしていたが、勤務シフトが減ったため辞めた。現在は月2万円で光熱費と食費をまかなっているため、食料配布に頼ることにした。

 開幕当日を迎えた五輪をどう思うのか。「競技場の建設など、五輪の準備をしてきた人たちがいますから。だから、開催は仕方がないと感じています」。淡々とした口調に、五輪への無関心が漂う。「自分の生活には全然関係がないので。家にテレビもないですし、そこまで見たいとは……」

 もともと都立大は、東京都が五輪のパブリックビューイング会場にすることを計画していたが、大勢の人を集めるため新型コロナ対策と矛盾が生じ、撤回に追い込まれた。「やらなくてよかったと思います。観戦しようと遠くから電車でやってくる人がいたかもしれないし」

「命を大切にしているのか」

 午後7時、東京都新宿区にある書店の軒先では、70センチ四方のテーブル3台にパンがぎっしりと並べられた。「夜のパン屋さん」の開店だ。

 営むのは…

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