総動員体制は第二次大戦後も継続した。佐藤卓己・京都大教授は「現代メディア史」(岩波書店)でそう指摘している。
確かに国家総動員法が廃止された戦後日本でも国民の多くが経済大国の座を勝ち取る新しい戦いに動員され、身を粉にして働いた。
しかし、それから時を経て、今や価値観や生活様式は多様化した。メディアも細分化してマスメディアが国民を一つにまとめる構図は弱まっている。さすがに総動員体制も崩れていようと思いきや、コロナ禍で認識を改めさせられた。最初の緊急事態宣言発令後、自粛要請に応えて感染症と戦う動きが社会を横断して巻き起こったからだ。
とはいえ、この感染予防の総動員体制はやがてほころび始める。自粛疲れが理由として指摘されたが、それ以上に政府が五輪開催にこだわった影響が大きかったのではないか。
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