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やまゆり園事件5年 隣人として暮らす社会に

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 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人が殺害され、26人が負傷した事件から、きょうで5年となる。

 殺人罪などに問われた元職員の植松聖(さとし)死刑囚は昨年3月、弁護人による控訴を自ら取り下げ、1審で死刑が確定した。

 裁判では「意思疎通の取れない人は社会の迷惑」などと重度障害者を差別する主張を繰り返した。

 我がことのように感じ、恐怖を覚えた障害者や家族は少なくない。周囲から差別的な視線を向けられた経験があるからだ。

 事件の被害者は裁判で、ほとんどが匿名とされた。現場の慰霊碑に名前が刻まれた犠牲者は7人にとどまる。何の非もないのに、今でも明かすことができない。偏見の根深さを示している。

 障害者を見る社会の目は変わっていない。施設の建設が住民の反対で中止・変更を迫られるケースが相次ぐ。障害者への虐待は2019年度に2202件あった。

 事件は、障害者の暮らし方を問い直すきっかけになった。

 植松死刑囚の動機について、判決は、やまゆり園での勤務経験が「基礎」にあると指摘した。

 事件後には神奈川県の調査で、一部の入所者の居室を長期間施錠し、不適切な身体拘束をしていたことが明らかになった。

 1960年代以降、郊外や山間部に障害者の大規模施設が次々と建てられた。しかし、隔離された場所での集団生活が、健康を損ない、職員による虐待を招きかねないと指摘されるようになった。

 どんな環境で生活するか、障害者の意思を尊重するのが、国際的な流れだ。地域のグループホームに移る人が徐々に増え、訪問介護のサービスも設けられている。

 事件で重傷を負った尾野一矢さんは昨年8月、訪問介護を受けながらアパート暮らしを始めた。父剛志さんは、やまゆり園にいた頃より表情が豊かになったと話す。

 だが、多くの重度障害者が大規模施設に頼らざるを得ないのが現状である。地域で生活するための支援が不十分だからだ。国や自治体の施策拡充が欠かせない。

 誰もが隣人として暮らせる社会にしていく必要がある。それが、障害者に対する差別や偏見をなくしていくことにつながる。

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