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64年から3度目の五輪 ベテラン通訳が明かす東京招致の舞台裏

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1964年東京五輪で学生アルバイトとして英語アナウンスを担当し、今回の五輪でも同時通訳を務める長井鞠子さん=東京都千代田区で2021年7月11日、大西岳彦撮影
1964年東京五輪で学生アルバイトとして英語アナウンスを担当し、今回の五輪でも同時通訳を務める長井鞠子さん=東京都千代田区で2021年7月11日、大西岳彦撮影

 東京オリンピックで、大会に関わる会議などで通訳を担当する長井鞠子さん(78)は、1964年の東京五輪では学生アルバイトとして競技の英語アナウンスを担当し、98年の長野五輪でも同時通訳を務めた。70年代から主要国首脳会議など国際交渉の場に通訳として立ち会ってきた同時通訳の第一人者は、今大会をどう見ているのか。通訳として関わった招致活動の舞台裏についても聞いた。【聞き手・荻野公一】

 ――長井さんと五輪との関わりは。

 ◆幼少のころから五輪のラジオ放送を聴きながら心躍らせていました。64年の東京五輪の時は国際基督教大学の学生でした。水泳の試合会場で英語のアナウンスをしました。アルバイト料はすごく高かったと思います。でも、いくらで何に使ったのかは忘却のかなたです。

 長野五輪では招致活動と大会期間中の通訳として関わりました。普段は「世界平和」と言っても非常に空疎に聞こえますが、五輪では「これって世界平和だよね」と思わせる雰囲気があり、すごく新鮮で楽しかった。「人間やっててよかったなー、人間って悪いことばっかりじゃない」という気持ちにさせてくれるので、私は五輪が好きです。より高く、より速く、より強く、を目指す壮大な運動会で、選手は自分のベストを尽くそうとする。ドーピングなど問題もありますが、映画スターを見るような、きれいでたくましい、そういう魅力があると思います。

 ――今回の東京五輪をどう見ているか。

 ◆過去のどの大会にもない、まか不思議な大会になると思います。観客がいない五輪なんてあり得ませんが、あり得ないことが起こっています。観客は五輪の非常に大きな構成要素です。アスリートが頑張り、IOC(国際オリンピック委員会)や組織委など組織が頑張る、そして観客がいて、わいわい盛り上げる。あとはメディアが、いろいろな人に伝える。それが相まって五輪になる。

 日本人は自分もですが、完璧を求めます。でも、完璧はあり得ず、いろいろな手違いが生じます。「人間がやるんだからこんなもんよ」とゆとりを持ってみんなに見てほしいと思います。私は、通訳として「明日はバッハ会長に付いてください」などと言われる日々ですが、与えられたことをきちっとこなす、それで貢献したいと思っています。

 ――IOCや組織委員会は「安全・安心」、政府関係者は「絆」を強調しているが、言葉を扱うものとしてどう聞こえるか。

 ◆上滑りする言葉が日本語にはたくさんあります。問い詰めると何なのか分からないものが。よく英語にしにくいのが「ゆとり」や「ふれあい」で、「絆」もそうです。「安全・…

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