特集

Listening

話題のニュースを取り上げた寄稿やインタビュー記事、社説をもとに、読者のみなさんの意見・考えをお寄せください。

特集一覧

社説

露首相の択捉島訪問 揺さぶりでは交渉動かぬ

  • コメント
  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 ロシアのミシュスチン首相が択捉島を訪問した。露首相の北方領土訪問は2年ぶりだ。

 政府要人の訪問を差し控えるよう申し入れてきた日本側の要請はまたも無視された。外務省がガルージン駐日大使を呼び、抗議したのは当然だ。

 昨年、ロシアが憲法を改正して領土割譲を禁止した後、初めての要人訪問となった。今回、首相は現地で対日関係に関わる新たな提案を公表した。異例の展開だ。

 これにはプーチン大統領が深く関与していた。首相の択捉島訪問前から「ユニークで前例のない提案だ」と予告していた。

 新提案は、北方領土を「関税免除区域」にすることが柱だ。外国企業向けに法人税などの税を免除し、日本以外の国からも投資を呼び込むという。

 日本が領有権を主張してきた北方領土に、ロシア主導で他国企業を誘致する提案であり、受け入れられない内容だ。ロシアの実効支配の強化につながるからだ。

 なぜ今、プーチン氏はこのような提案を持ち出してきたのか。

 まずは、日露共同経済活動の行き詰まりがある。漁業や観光、環境などの分野で両国企業を進出させる構想だ。2016年に首脳間で合意された。

 日本側は、これをテコに領土問題の解決と平和条約締結に結びつけたい狙いがあった。だが、「自国の法律適用」を訴えるロシアと折り合いがつかず、今も開始できていない。

 プーチン氏は交渉の停滞に目を付け、日本に揺さぶりをかけようとしているのではないか。

 安倍晋三前首相は従来の4島返還要求から「2島」へとかじを切ったが、ロシア側の譲歩を引き出せなかった。後任の菅義偉首相になっても交渉が動く気配はない。

 ロシアの国内事情も絡む。プーチン大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大による経済低迷などから支持率を下げている。9月の下院選を前に、経済開発への取り組みをアピールする必要に迫られている。

 ロシア軍が北方領土での軍事演習を繰り返す中、日本側の不信感は高まっている。揺さぶりでは交渉が進まないことを、ロシアは自覚すべきだ。

コメント

※ 投稿は利用規約に同意したものとみなします。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集