プリマ森下洋子さんが70年踊り続ける理由

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公演への意気込みを語る松山バレエ団の森下洋子さん=大阪市北区で2021年7月15日、菱田諭士撮影
公演への意気込みを語る松山バレエ団の森下洋子さん=大阪市北区で2021年7月15日、菱田諭士撮影

 今年、舞踊歴70年を迎えた松山バレエ団団長でプリマバレリーナの森下洋子さんが8月14日、フェスティバルホール(大阪市北区)で「新 白鳥の湖」全幕の主役を務める。「まだまだ未熟ですが、毎日踊っていられることが幸せで楽しいです」。謙虚な言葉から、夫でバレエ団総代表の清水哲太郎さんが「完璧主義者」と評する森下さんの強さとしなやかさが伝わってくる。作品の魅力や20世紀を代表するバレエダンサーらとの交流、そして踊り続ける理由について語った。【倉田陶子】

トライできることに大きな喜び

 「白鳥の湖を踊って50年以上たちますが、『できた』と思ったことは一度もありません。できないことが毎日見つかって、『じゃあ、明日はこうやってみよう』と。ステップ一つとっても何百通りのトライをして、できたことを自分の体に染みこませていく。トライできることに大きな喜びを感じています」と森下さんは話す。

 清水さんが1994年に新たな演出と振り付けで世に送り出した「新 白鳥の湖」。森下さんは公女オデットと黒鳥オディールの2役を演じる。魔王フォン・ロットバルトにさらわれて白鳥の姿に変えられたオデットが、皇太子ジークフリードと出会い真実の愛を貫こうとする姿を、チャイコフスキー作曲の美しい旋律に乗せて紡ぐ。

 「オデットは人を深く愛し、思いやり、何があっても絶対に前に突き進む強さと優しさ、明るさを併せ持っているすばらしい女性です」。森下さん自身、「何があってもプラスに考える。クヨクヨしない」という思考の持ち主だそうだ。清水さんは「そういう森下がオデットをやる。だからいいんです」と話す。

 世界中で上演されてきた名作において、白鳥と黒鳥は善と悪の対比として描かれることが多い。だが、単純な二項対立を排除した清水さんは、「オディールもロットバルトにさらわれた身。善性の代表とも言える崇高なオデットに引かれているんです」と明かす。オディールがオデットのふりをし、ジークフリードの前に現れる第3幕。「オデットとして振る舞うオディールの心情を、圧倒的な喜びによって表したいですね」と森下さんは語る。

お金で買えない出会い重ね

 原爆投下から3年後の広島市で森下さんは生まれた。…

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