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パン介し、人とつながる 関西のショップ巡り魅力発信 浅香正和さん=中川悠 /大阪

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「今日も3軒のパン屋を巡ってきました」と笑う浅香正和さん=大阪市北区で 拡大
「今日も3軒のパン屋を巡ってきました」と笑う浅香正和さん=大阪市北区で

 コロナ禍による飲食店の自粛が続く中でも、多くのパン屋が好調な売り上げを見せている。テークアウトで買い物ができ、食パン、カレーパン、クリームパン……と品数が豊富。焼きたてのおいしさをいつでも楽しめる手軽さこそが、地元のパン屋に人気が集まる大きな理由だろう。

 「世の中が明るいニュースを求めている今だからこそ、パン屋さんと力を合わせて地域に元気を届けたい」と話すのは、テレビや雑誌にも多く登場するパンの専門家、浅香正和さん(53)だ。

 独立する前、フィリング(製菓・製パン材料の具材)を扱う企業に長年勤めていた浅香さん。「パン屋さんに貢献する」という会社の理念を受け、自身が関われることを探ろうと2010年から関西のパン屋を巡り始めた。それぞれのパン屋は多忙で、店のこだわりやパンの情報を発信するのが得意ではないと痛感した。

 そこで、食べ歩く中で出会ったパン屋の情報を独自の切り口でブログに書きつづったところ、注目が集まり、いつしか浅香さんは「パン王子」と呼ばれるように。15年から「パンヲカタル」という“屋号”で発信し、グルメ番組や情報番組から「関西のパン屋を幅広く知る存在」として出演のオファーが増えた。

 浅香さんの仕事は店の紹介だけにとどまらない。有名なパン屋と新商品を開発したり、複数のパン屋とコラボしたイベントを開催したり。関わるたびに「売り上げが増えた」「情報発信がありがたい」という喜びの声が届いた。「パンを介して、人と人とがつながることがうれしいんです」

 浅香さんのチャレンジは広がり続けている。

 兵庫県猪名川町で3年目を迎える「いなパンマップ」の作成。町内に点在するベーカリーショップ7店の魅力を紹介する。浅香さんは商工会から依頼を受けて監修を担当し、全店の味や店主のこだわりを丁寧に取材した。「地域のパン屋は、見た目にも華やかなパンが集まる宝石箱のような存在」。地元で暮らす人たちはもちろん、観光客にも「地域の魅力を再発見してほしい」と願う。

 さらに「おうち時間」が増える中での新しい楽しみ方の提案として、パンに合うノンアルコールビールづくりにも挑戦中。パンにはチーズとワインが合うと言われているが、ビールとの組み合わせも味わい深い。でも、どうしてノンアルコール? 「実は、僕自身が下戸なんです」と笑う浅香さん。

 目指しているのは、ビールを口に含んだ時にパンの小麦の味をしっかり感じられて、後から苦みが追いかけてくる一杯。大阪市東淀川区の醸造所「上方ビール」がこの商品コンセプトに賛同し、開発がスタートした。秋には完成予定という。

 パン屋と消費者をつないで10年。同じようにパン屋を支える仲間も増えてきた。「次にチャレンジしたいのは、パン屋を応援する人が交流できる場づくり」。お勧めのパンをそろえ、パン好きが集まる週に数回のセレクトショップをオープンするべく、浅香さんの地元、堺で準備を進めているという。「パン屋さんが作るパンも、パンを介した人のつなぎ方も可能性は無限大」。おいしい笑顔を届けるため、浅香さんは今日もどこかのパン屋を巡り続ける。<次回は9月3日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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